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連載小説「保健室のロボット先生」

Myu氏に挿絵もらいました。感謝っ!
LOG

 白いカーテンが、風にゆれている。カーテンが揺れるたび、消毒液の匂いが一緒にゆらりと動く。窓ガラス一枚を隔て、乾燥した校庭のトラックを短パン姿の学生が走っていた。
 ルチルは麻を起こさないように、ゆっくりとカップを机に置いた。
 彼女の目の前には、一台の古びたノートパソコンが一つ。ディスプレイには、メーラーが立ち上がっていた。
 授業終了の鐘が響き、背後で身じろぎをする気配がした。
 外を見れば、既に校庭を走っていた生徒達は居なくなっていた。ルチルは、一度部屋を見回して、データベースを走査する。

 答えはすぐに来た。麻の担任は、二時間目に授業はない。
 確認を取るとルチルは立ち上がり、白いカーテンの向こうに居る麻に向かって話し掛ける。
「ちょっと、先生でてくるから、お留守番よろしく」
「……水質検査ですか?」
 少し間を置いて、麻の小さな声が聞こえる。カーテン越しに聞こえる彼女の声は、いつもにもまして頼りない響きがした。
「水質検査は、お昼休みの後だから大丈夫。よろしくね」
「はい」
 そしてまた身じろぐ気配。既にベットの一つは、麻専用とまで言えるかもしれない。
 扉の近くに、鏡が備え付けてある。そこをみて、ルチルは一度己の顔を確認。
 いつものように、少し明るめの髪の毛が、後ろで纏まっている。ポニーテールとちがい、低い場所でおざなりに止めてるだけ。頬には、目の中央から顎まで垂直に線が走っている。メンテナンスエッジと呼ばれる溝だ。べつにロボットと人間を区別しやすいようについているわけではない、だいたい目を見れば、区別などすぐにできるのだから。
 ルチルは、自分の目をみる。紫の虹彩がきゅっと焦点を結ぶために動いた。
 軽く身だしなみをチェックしおえると、ルチルは職員室へ向かって歩き出す。
 
 授業の合間は十分ほどの休み時間がある。といっても、本来は移動教室は体育の着替え、次の授業の用意に使われるはずの時間だが、その名目で使われたところをルチルは見たことはない。
 廊下を走る生徒の間をぬけ、職員室の目の前に。既に次の授業に向かうのか何人かの教師が慌しく出入りしている。
 スライド式の扉は、錘によって自動でしまるので何度も何度もパタリパタリと、音を立てていた。
「あら、ルチルせんせ。どうしたの、こっちくるなんて珍しいじゃないの」
 後ろから声をかけられて、ルチルは振り返る。彼女の目の前には、同じ時期にこの学校に赴任してきた女教師が立っていた。
「秋末(あきまつ)先生。ええ、ちょっと用事がありまして」
 ルチルは、秋末を見るとどうしても見上げる体制になってしまう。ルチルの背はそれでも標準、どちらかといえば秋末がでかいのだ。
 秋末は、ルチルの肩を掴むと、その場で回転させる。一八〇度くるりとまわり、ルチルは扉を向く形になる。
「わっ……お、さないでください」
 いったところで、聞くわけもなく。しかも、バレー部顧問の両腕は伊達じゃなかった。必死で、ルチルは抵抗するものの、出力調整が間に合わず扉につんのめった。
 派手な音が廊下に響く。
「ありゃ、ごめん。大丈夫?」
「だ……ひじょう、ぶで……ふ」
 電子脳は、衝撃に弱い。もとより力仕事をするような機体ではないので、衝撃対策は生活レベルでしか、していない。しかも型が古く、電子脳はすぐに悲鳴をあげる。
 簡単にいえば、すぐに目を回すのだ。
 倒れかかったルチルの腕をとり、秋末は職員室の扉を開ける。
 ルチルを引きずりながら、秋末は自分の席へ。途中、何人かが又かとため息をついた。 
「ごめんね〜」
 自分の席にルチルを座らせ、秋末は近くにあったノートでルチルを扇ぐ。扇いだところで、どうにかなるわけではないが、かといって何もせずに見ていられるほど、秋末は器用な性格をしていない。ショートカットの髪の毛と、首から下げたホイッスルが、扇ぐノートにあわせて揺れている。
「どうしたんです? 秋末先生。おや、ルチル先生じゃないですか」
「あ、あはははは。ちょっと……」
 横に座っていた教師の声に、秋末はばつの悪そうな笑いを返した。
「あ、あれ? 秋末先生?」
 目を覚ましたのか、ルチルが大きく見開いた目を瞬かせる。
 秋末は、一安心だと大きくため息を一つ。横から覗き込んでいた教師も、安心した顔になる。
「すみません。倒れてしまいましたか。えーと、そうだ私、南井(みなみ)先生に――」
「私ですか?」
 覗きこんでいた、教師が首を傾げる。少し後退した額を隠すように、短髪の髪の毛を前に垂れている。細い目に、細いめがね、そして体も細い。でも背は高い。マッチ棒みたいだと、あの額はマッチ箱に擦られて後退したのだと、生徒達にもっぱらの噂である。
「あ、南井先生――」
 養護教諭から、生徒のことを言うことはできるだけ避けたい。いってしまえば、自分が生徒のことを邪魔だと思ってるんじゃないかと、どうしてもその恐怖からルチルは踏み出せなかった。
「どうしました?」
「――あの、先生のクラスのプリントいただけたらと」
 ここでいうプリントというのは、親へ配るための配布物だったり、授業のテストや宿題のことである。
 ルチルはいってしまってから、はっと口を噤む。これでは、まるで麻が来ていることを、遠まわしにいっているのとかわりはしない。
 ――もし理由を聞かれたら。
 ロボットが、人間相手に嘘をつくことは出来ない。カウンセリングなどを行う場合のような、例外でもなければ、ルチルは嘘をつくことは出来ない。
 南井は一瞬首を傾げるが、
「わかりました。ちょっとまってください」
 と何も聞かずに頷くと立ち上がった。
「あ……」
 ルチルが呆けている間に、南井は机にのっていたプリントから何枚かを集めていく。
「はい、今週分以外はすぐに出ないので、放課後までにはあつめておきます」
 と、気がつけば紙の束が出来上がっていた。ルチルは、突き出されたそれを受け取る。ルチルは唇を噛み締める。
 ――いわなくてはならない。確かめなくてはならない。
 そう、それは自分のためではなくて麻のためだ。
「あ、りがとうございます。あの、南井先生のクラスに麻ちゃんって子いますよね」
「え? あ、あぁ。小崎麻(こさき あさ)ですか。あの子が?」
「いえ、どうなのかなって……」
「どう? うーん、とくに変わったことは無いですねぇ」

「――え?」
 鐘が鳴る。二時間目の授業が始まる。





 南南ってかいてたら、南がゲシュタルト崩壊。ミナミってなんでミナミっていうんじゃろ。北、ミナミ……やばいです、けっこう崩壊してます。こう言う感覚を大事に……する必要はないですね。でも、なんでミナミなんだろなぁミナミですだよ!? あひー。

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