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連載小説:014

014:log

 主な仕事は護衛だ。さすがに、同じ学校の同じクラスの異性の家にはいりこみ、夜をともにするのは問題があるので、それ以外。
 そう、自由な時間なんて寝るときぐらいなのだ。
 とはいえ、特に緊張感も無いまま過ぎていく時間のなかで、すっかりその仕事というのを忘れてしまっていたのは仕方がない。
 ほんの数日前までは、平穏な生活をしていたのだから。

 わらわらと、教室から出て行く生徒の波とは別に数人が固まって教室に残っていた。
 そのなかに鉄国と興の姿もある。
「カラオケ? 金ないしゲーセンがいいんだけど」
「んじゃボーリングとか。おれゲーセン嫌い」
「お前の好き嫌いとか聞いてないし。ボーリング疲れるだけじゃん」
「お前の体力も聞いてねぇ」

 顔を付き合わせるというよりは、適当に同じ場所へ転がしたようなイメージで、数人がばらばらにしゃべっていた。唯一自分の席に座ったままの興は、つまらなそうに頬杖をついて話を聞いている。
「カラオケにいくなら、早く決めないと時間がもったいない」
 鉄国がめんどくさそうに呟く。
「クロは、カラオケ派?」
「僕はどこでもいいよ。ただカラオケになった場合時間があまりないのは皆不満じゃないのか? ソレをいってるだけ。決めるなら早く決めよう。カラオケを没にするなら別に急がなくてもいいけど」
 ぱたぱたと、手を振りどうでもいいと鉄国は言う。
「んー、じゃぁゲーセン」
「どうしてそういう話しになんだよ。ボーリングにしようぜ」
「カラオケいけなくなるしさー。カラオケに」
「CD屋いきたいんだけど」
 マッタクまとまらない議論に、じわじわと興の眉間に皺がよっていく。
「だー! うっせ! 俺金ないのしってんだろが! ゲーセンも、カラオケも、ボーリングも、俺は行かん! 帰る! 貴様らはせいぜい青春を謳歌して青春を無駄遣いしてる不良どもにかつ上げされてろっ、バーカ! ちくしょー!」
 一気にまくし立てると、机をバンバンと叩き始める興に、皆が苦笑する。
「安心しろ、マゾ男」
 ぽん、と肩に手をおかれ友人の一人が言う。
「なんだ、奢ってくれるのか?」
「ツケといてやるからさ!」
「死んでしまえ!」
 勢いに任せて振り上げたこぶし。机が飛ぶ。何事かと、廊下から顔をだした小崎と目があった。
「……」
 一瞬、アレがいたのかと驚いていたのだろう。一通り、中に居る人間を見ると安心したように息を吐く。
 その姿は、たしかに張り詰めていたがなぜかいつもの小崎に見えた。だから何の気なしに、大きな音に驚いて教室を覗いたようにしか見えない。でも、興には彼女が間違いなくアレに怯えて顔をだしたのだとわかる。
「あ、わりぃ。なんでもない」
「興、帰ろ」
 言われて、やっと興は自分の仕事を思い出した。
「あ、……皆わりぃ、又今度な」
 集まっていた面々に手をあわせ、興は鞄を持ち上げる。
「なに、遊びに行くの? だったら行けばいいじゃない」
「へぇ?」
 まさかの言葉に、興は口を開けて固まる。
「その代わり、私もついてくけど」
「へぇぇぇぇ!?」

 クラスメートの女子が混ざるという、とくに華やかな仲間内ではないはずのグループにとってはあまりにも異例な事態に、事体は異様な雰囲気につつまれていた。
 衣緒と小崎をくわえ、合計八人にもなった大所帯は大所帯であるがゆえゲームセンターを諦め、ふらふらと駅前を歩いている。それだけでもそれはそれで賑やかだった。
「どうすんだよー」
「どうしようかねぇ。それにしても、こいつを下僕にしたからってわざわざついてくることないんじゃないの?」
 こいつといいながら、小崎の横を歩いている興を指差す。
「私と興は、離れるわけにはいかなから」
 小崎の言葉に、興は頭を抱えた。
「だからぁ。なんでややこしい言い回しするんだよ!」
「事実じゃない」
「いや、そうだけど」
 かといって離れられない理由は他のやつらにはいえないのだ。だから、離れるわけには行かないといういがいにない。
「アツアツですなぁ。あー、春がほしい」
「え〜、もう夏だよ?」
 空風の言葉に、皆が苦笑する。
「もうどうにでもしてくれ……。ああ、そうだCD屋いこう。かねかからんし」
「まぁ、いっか。どこ行く予定も無いなら。なんか買うんだっけか」
 ぞろぞろと、大所帯は進行方向をかえると駅前に唯一あるCD屋へと足を運んでいった。
 店に入り心地の良い風にふかれ、そういえば自分は風邪をひいていたのだ、と興は思い出した。今日はやけに日差しがうっとうしいとおもったが、熱があっただけだ。もっと熱が上がれば寒気がやってくるだろう。ソレまでに安静にしないと。そんなことを考えていると、腕を引っ張られる。
「興」
「ん?」
「体調は、大丈夫なの?」
「あ? あ、あぁ。大丈夫。ただ、今日は早めに寝ることにする」
「わかった」
 CDが陳列している棚で二人は見つめあうようにして話していた。二人は気がついていない、おくの通路から、六人の顔が、一二個の瞳が二人を見ているのを。
「こりゃ、言い訳の使用がないわな」
「あの、馬鹿……人が折角苦労してやったのに」
 鉄国は頭をかかえてため息をつく。

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