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今日の三題話

「流れ」「闇」「希望」
Myu氏の挿絵入り。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 一体いつまで、ここで待っていればいいのか。
 疑問というよりはすでに焦燥に近い感情に、押しつぶされそうになりながらヒサキは考える。背から差し込む夕日が、ジワリと肩を温めている。ゆっくりとただ砂が流れ落ちるように、肩に熱が溜まっていく。それに反して、リノリウムの床は体温を奪うことに関して容赦が無かった。制服のズボンから染み込んでくる冷たい空気、それが如実に床の温度を語っている。上履きのゴム底はすでに熱を遮断する意味で役には立っておらず、安物の木と鉄で出来た椅子は冷たい床の味方らしい。

 温度差が直接疲労に結びつくなんて、考えもつかなかった。そういわんばかりに、ヒサキは苦い顔をする。うつむいているので、髪の毛が垂れ下がり完全に表情が読めるわけではない、逆光もあいまって目線はようとして知れない。髪の毛は、高校生の見本とも言えるような短髪、薄く茶色に染まって見えるのは、地毛か夕日か人工的なのかこの場所からは判らない。
 ヒサキはただ静かに、学校の備品である椅子に座っている。肘を膝に乗せ俯き、ただじっとその場から動かない。部室としてあてがわれている部屋は、通常の教室の半分も無く机とロッカーの所為で更に狭く感じる。しかもうす汚いので、すでに物置小屋のような感じだ。太陽のスピードが速いのか、自分の感覚がゆっくりになっているのか、彼は陰の動きはじっと目で追っている。ああ、地球は回っているのか、などと彼は頭の中で一人ごちた。影が伸び、光が追いやられる。闇の領域に全てを押しつぶされたらきっと世界の終わり、そのカウントダウンを頭の中でしている。
 じっと身じろぎすら最小に押さえ、ヒサキは椅子に座りつづけている。どうしてこうなったのだっけ? そんな疑問はすでに解決済みだった。答え、自分が優柔不断だから。部活の勧誘日なのは頭にいれていた。部活動に興味はない、というより彼は元より他人とのコミュニケーションには、興味がないのだ。だから帰宅部になろうと決めていた、そのために勧誘を交わすための言い訳まで考えていたのに。そこまで考えて、彼は一度ため息をついた。
 することも無いまま、ヒサキの頭では此処に連れてこられた経緯が思い起こされる。
 全校生徒参加のクラブ紹介が終わり、ヒサキは人の流れにのったまま教室に戻ろうとしていた。体育館から自分の教室までの道のりで、すでに部活勧誘は始まっていたのだ。教師の言を信じた自分を呪って、彼は頭を押さえる。さっさと教室に戻り、ドサクサにまぎれて家に帰る算段だった。この後の時間は、部活の勧誘と体験入部、そういう風にきいていた。だから、何も無いなどと勝手に思い込んでいたのだ。彼は教師より、自分の浅はかさにため息をついた。通路ではすでに着ぐるみを着て少しでも目立とうとしている哀れな先輩や、部活のモチーフなど思い思いのものをもっている先輩が勧誘を開始していた。
 柔道着を来ているガタイの良い先輩がヒサキを見下ろして笑った。彼は引きつった笑顔を返す。
「君、いい体をしているじゃないか。柔道部にはいらないカッ!」
 爽やかな笑顔と、爽やかな物言いの癖に暑苦しい先輩の手が、ヒサキの両肩を叩く。視線をそらせば、すでに押しが弱いと見たのか集まってくる勧誘員。怪しげな薬剤の入ったフラスコを持った科学部、分厚い本を持ち分厚いメガネの奥から彼を見る文芸部。遠めには、大掛かりな機械を首からかけ、なにやら騒いでいる先輩。多分、無線部。彼は、一歩あとずさる。
 言い訳は考えている、だがこれは虎の子だとヒサキはカブリを振った。そう、何度も同じ言い訳は聞かない。学校を抜け出すのに必要な言い訳、リーサルウェポンなのだ。
 決心して、ヒサキは肩を揺らす先輩を見る。
「ぼ、僕はいい体なんかしてません」
 とりあえず言い訳をしてみる。だが、ヒサキの言い訳に肩を揺らしていた柔道部員は凶悪な笑みを見せた。カモだ、そういう顔だった。いい体をドコで線引きするかはしらないが、少なくても彼は標準的な体であり、少なくてもひ弱と言うほどではない。
「はっはっは。大丈夫! 鍛えれば、すぐにでもいい体になる!」
「本に興味はありますか!?」
「ドイツの科学は――」
「でデ出DEで電波が――」
It doesn't want to be related, doesn't want to believe, it doesn't want to <br />
notice, and I do not want to be damaged.
 一度に叫ばれ、何を言っているのか判らないが少なくても自分がピンチだということに、ヒサキは気がついた。
 これはもう、虎の子を出すしかないのではないか。ひるんでる隙に逃げ出せば、何とかなるかもしれない。使わない最終兵器に意味はないのだ。彼はそう言い聞かせて、呼吸を整えた。
「えと、僕は帰宅部に入る予定ですから!」
 予定では、先輩らは何を馬鹿なことを。もしくは、そんな部活は無い。そういう反応を示すはずだった。そう、少なくてもヒサキの頭の中ではそうだった。だが、予想は裏切られる。
「ああ、なんだアソコの部員か」
 ぱっと肩から手を離され、ヒサキはよろける。柔道部の先輩が背を向けると、それを皮切りにほかの勧誘員も彼から離れていった。予想通りの展開ではなかったが、希望どおりの状況だと彼は、胸をなでおろし歩き出した。その状況に一片の疑問も抱かずに。
 自分の教室に向かう生徒の流れの中央、一番目立たない場所に陣取りまわりから来る勧誘員を避けながら彼は教室に向かった。
 でも、勘違いをしていることにヒサキは最後まで気がついてなかった。彼は、勧誘員から逃げ切って教室に戻ったと思っていた。だが事実は違ったのだ。
 それの事実は、教室の目の前でヒサキに突きつけられる。
 教室の扉を開けようと取っ手に手をかける。その瞬間、扉が教室側から開かれた。
「では、また来る!」
 ぼすっとヒサキは鳩尾辺りに衝撃を感じる。何だと思って視線をおろすと、頭頂部が見えた。
「んがっ! 貴様、前を見て……ん?」
 頭頂部は、ヒサキの鳩尾から離れ、一歩下がる。小学生、いや中学なりたてのような少年がそこにいた。
「小学生?」
「貴様、加賀ヒサキ(かがひさき)か」
 ふてぶてしい態度に、一瞬むっとくるが、視線の墨にうつったものにヒサキは一瞬思考を奪われた。それは、上履きの色だ。赤。制服ともども、上履きのゴム部分、そしてジャージの色が色分けされているこの高校では、すぐに上級生か下級生かがわかる。そして、赤は三年生の色。青が二年生、緑が一年生だ。
「三年生?」
「よし、確保」
 何を? そう考えたときには両手が思考を無視して上がった。歩けないけが人を引っ張るような格好にさせられて、うろたえるヒサキ。
「なっ? なにこれ!? え? ちょちょちょっと! あの!」
「許せ1年、部長の命令は絶対なのだ」
 右から聞こえたのは、優男みたいな声。ヒサキが振り返ると、茶髪が目に飛び込んできた。声のイメージそのままだとヒサキは思う。
「ゴメンね、ヒサキ君〜。部長には逆らえないの〜」
 今度は左側から声が聞こえた。振り向くと、そこにはセミロングの女性。ヒサキは何がなんだかわからなくなって、部長だとおもわしき少年に顔を向ける。
「ようこそ、帰宅部へ。さぁ、部室へ案内しよう」
 どう見ても少年の姿をした、部長らしき人物は凶悪な笑みを浮かべてヒサキに告げた。
 少なくても、その笑みは少年のできる表情ではない。ヒサキは、引きずられていく体を他人事のように感じながら考えていた。

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コメント

学園モノに期待age。続きませんとか言われたら泣く。
あと、リーサル・ウェポンが普通だと思う。何かのパロとかならごめんなさい。

  • myu
  • 2005/03/15 21:09

 まぁ、流石にここで終わりってわけには……。
 リーサル・ウェポンになおしておいた。ただの勘違い。コミュニケーションと同じレベル、はずかしい。
 ふいんき(←なぜか変換できない)

  • kamina
  • 2005/03/15 22:39

コミュニケーションは間違ってないのでは・・?と揚げ足取りしてみる。そこで挙げるならシュミレーションとか。
久々に挿絵しても良い?

  • myu
  • 2005/03/16 00:53

え? コミュニケーションはあってるけど?
 あ、ああ……文体がおかしい。もういいです、間違いでいいですはい。orz
 良いも何も、既に挿絵がアップされていたのでこっちも良いも何もなく掲載。
 

  • kamina
  • 2005/03/16 10:03
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