スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

今日の三題話

「大空」「停止」「神出鬼没」
Myu氏の挿絵入り。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 三者三様という状態が、ドコまでもしっくり来る。
 期待していたものと、大幅にかけ離れた事象に反応できず、しかも人見知りが災いして身動きの取れないヒサキ。
 向けていた視線に、いきなり何かが飛び込んでただ驚いているステラ。
 そして、知らない人たちが部室に居ることに、どうしようもなく驚き、間違えましたというかと迷っている志茂居ケイタ。
 それぞれがそれぞれに驚いたまま、ただ時間だけが我知らずとコロコロ転がっていった。

 はじめに動いたのはヒサキ。なけなしの勇気を振り絞り、彼は立ち上った。
「ど、どうも。一年の加賀です」
 ヒサキには、それ以外に最良の選択が思いつかなかった。黙ってじっと見ているわけにも行かない。それだけは絶対にあっていると信じて。
 ヒサキの言葉に停止していた残り二人も動き出す。
 目の前にいた二人組みが新しく入った新入生の二人だと理解し、志茂居ケイタは肺に残った空気を搾り出す。
「ここここんにちわ、しんしし新入生の人たちだね。僕ぼくぼくぼぼぼくは、志茂居ケイタ。よろしく」
 扉を通り抜けることができるのかと、不安になるような恰幅のよい腹を揺らしてケイタは部室にはいってくる。
 荷物をロッカーに入れる姿を、ヒサキはじっとみていた。というよりも、それ以外に彼に視線のやり場はなかった。二年生であることを確認してヒサキは安心する。これなら、他の先輩もすぐに部室にやってくるだろう。
 再び流れ出す無言には、既に先ほどのような緊張感は無くただゆっくりと、隙間に吹き込んだ風だけが揺れていた。凝り固まっていた空気がほぐされていく感覚。窓の外では、雨上がりの真っ青な大空が顔を出している。
 いきなり、乾いた音が部室に響いた。
It is not thought that it is necessary. It is not thought it is indispensable.It is not thought that it is a hobby. However, it is an inevitable act.
 ヒサキは、驚き音の出もとに目を向ける。その視界の先で、ケイタが菓子を広げている。
「ききき君も、たべたた食べるかい?」
 そういって、菓子の袋を差し出した。机の端と端では届きもしないが、どちらにしろヒサキはそんな気分ではく、薄笑いを浮かべながら、「いえ、いりません」などと当り障りの無い返事をした。
 無音だった部室は、食べ物の租借する音に支配され、既に時間も温度も風も空気も、どうでも良くなるような、そんなグダグダな雰囲気が漂っていた。
 

 一線を引くことが、どれだけ生活する上で不便なことなのか。
 そんなものは、賀古井にとっては判りきった事実である。彼は、ただそうありたかっただけだというのに。
 過去に引きずられているというのは、判っているが事実を理解したところで現実が変わるようなことは無い。賀古井は、誰も居なくなった教室に座りつづけている。確かこの場所は、あの人のクラスと同じ場所だ。神出鬼没で意味不明。ぱっと現れたとおもったときには、既に居なくなっているような人だった。そして、加賀ヒサキの次に早くあの席を立ち上った男。色々あったと思う。自分の知らないところで何もかもが動いていた。けれど、知らないはずの場所があまりにもすぐ近くだった。自分は、動いてしまったことに気がついた。賀古井は一瞬、窓越しに空をみる。
 人とは群れないし、自分の雰囲気は浮いていると実感している。けれど、誰かに頼ってしまえば、誰かに泣きついてしまえばそこで全てが負けになると信じているのだ。
 頭が言い訳ではないのに、天才でいなければいけない。表面上の天才を演じるのはそれこそ簡単で、そんなことは賀古井にとっては問題ではない。
 臆病な本心を、理性とプライドで無理やりねじ込んで、まるで手すりにしがみつくように歩いてきた。茨の道と言うよりは、リハビリをしているような毎日。
 ただ取り繕うためだけに、日々を過ごし、何かを成し遂げるために全てをかなぐり捨てる必要があっただけなのだ。
 鉄で出来た仮面と、人を近づけない剣、倒れないための鉛の靴と、一握りのプライド、それで必死にひ弱な自分を取り繕っている。
 不恰好な自分を思い、賀古井は鼻で笑った。
 立ち上ると、椅子が床を擦る音に教室全てが震えたような気がした。それを無視して彼は歩き出す。昔、背中を追いかけるだけだった尊敬する先輩が居た教室を背に。

 既に放課後を過ぎた廊下は、薄暗く。活気で熱量を保存していた床は、既に過去の話になっている。それでも校庭からは、運動部の掛け声が聞こえてくるし、外は十分に明るい。
 賀古井はそんな煮え切らない校舎を、急ぎもせずかといってのんびりでもない足取りで部室にむかっていた。2階は三年生の教室と文科系の部室が並ぶ、3階は二年生と特殊教室が並んでいる、4階は一年生と図書室、そして文科系の部室のあまりだ。帰宅部は、2階の部室棟に位置し、賀古井は階段を使わないで部室に移動できる。
 曲がり角を曲がれば、部室が見えてくる。
 文科系とはいえ、別に大人し目の部活かといえば、そうでもない。特殊教室を部室にしている科学部なんかは、一年に一度は爆発事故を起こしているし。四階に隔離とも言える位置付けで部室があてがわれている無線部は一度、国から起こられるほどの違法な電波を発信していたりしていた。同四階の、写真部はたまに本物の出版社からお呼びがかかるようなレベルらしいが賀古井にはわからない。
 今横を通った漫画部では絶えず奇声が聞こえている、もちろん今も、
「妖精さん! 妖精さん!!」
「トニー! 僕はやったよ!」
 できればこの部活にだけは近寄りたくないものだ、と賀古井蔑んだ目で部室をみる。扉には、アニメチックなキャラクタが「漫画部へようこそ」としゃべっているポスターがはってあった。
 その隣は、文芸部でここは比較的静か。
 部室が並ぶ廊下を、賀古井は全く乱れないリズムで歩きつづけている。
 文芸部の隣は、もぬけの殻の演劇部だ。大体屋上での発声練習か体育館の舞台をつかって練習しているのでここは物置に近い扱いになっている。
 なぜ、賀古井が部活動についてそこまで知っているかと言うと、

「おはよう」
 扉を開けると、そこには行儀よく座る部員が三名。それをみて、賀古井は一度軽く頷く。
「おおおおおはおはようございます」
 菓子を食いながら、志茂居が顔を上げる。つられて沢村と加賀も頭を下げた。
「さぁ、唯一我らの部活の活動をする日だ。志茂居、用意はすんでいるか?」
 賀古井の言葉に、菓子を食べつづけていた志茂居は頷き、菓子をしまった。巨体が、意外と機敏に椅子から離れる。
「新入生は今日は見学だ。説明は歩きながらしよう」
「あの、なにしにいくんでしょうか?」
 加賀ヒサキが、疑問を投げかけながらも椅子を立つ。
「帰宅部の仕事だ。帰宅させるための部活だからね、私たちは」



 昨日、停電でゲーム3時間分が消えた。
 ラノベスレ用のSSも消えた。
 もうすぐ8万ヒットっぽい。
 鼻水が止まらない。

スポンサーサイト

コメント
トラックバック
この記事のトラックバックURL