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今日の三題話

「侍」「寒い」「左手」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 夕日の角度は、自分をどこまでも鋭角にさせるという自己鍛錬。突き刺さるような光に、街が赤い血を流す。街の血が流れきった頃には、きっと街は冷え切って真っ黒になって沈んでいく。それから逃げるように、子供達が帰路を駆ける音が聞こえた。
 長く長く地面に焼き付けられた、四つの黒い影。身動きせずに、まるで写真撮影が終わるのをじっと待っている子供達みたいに、必死で動くのをこらえている見たいだった。
 夕日に切り取られ、真っ黒に縫い付けられた影は、次第に温度を無くしていく。まるで傷口を治すかのように温度を運んだ風が流れこむ。けれど、どこまで行っても傷は治らず、それどころか次第に大きさを広げ、気が付けば街は傷口だけになっていく。
 四つの影は背から流れてくる暖かい風におのおのを揺らし、じっと佇んでいた。海の匂いがする。海の匂いは一瞬で、すぐにもとの風に戻っていく。そういえば、海あったんだよな。影の一つが呟いた。

 救急車の赤い光り。白いバンが、鉄色のバンだったモノに成り下がる。道路標識が、壁標識になるぐらいに曲がっていて、塀はもう猫の通り道にはなれそうも無い。よく事故が起こるのか、十字路には角四つ全てにカーブミラー取り付けられていたけど、それも標識と一緒に、空を映す鏡になっていた。折れ曲がり美しかった特殊加工のステンレスの鏡面部を、まるでゴルフボールの様にへこませ、寒い空を歪に映している。
「意外と派手だったな〜」
「二人とも大丈夫だったかな」
「別に死んだところで、何も変わらない」
「そそそれそれは、ひどどいんじゃ……」
 思い思いに呟きながら、影はその事故を眺めている。
「なにか変わりましたかね?」
「あの程度で変わる性格でもないだろう」
 白い救急車に運ばれる二人が見える。制服の黒が、やけに事故現場に映えていた。
 バンの運転手は、四つの影に気がついたが一度軽く頭を下げて、すぐに警官の方に向き直る。
「いくらでやとったんすか?」
「元から協力者だ」
 せこいなー、という呟きが、少し強めの風に吹かれて流れる。
「あれれ、つかまっちゃったよ」
 バンの運転手が、頭を下げながら警察官が乗ってきたパトカーに乗り込んでいく。すぐにパトカーは出発する。気が付けば、救急車も既に出ていた。
「もう、手伝ってもらえないんじゃ」
「すぐに釈放される、問題ない」
 現場検証が始まっているのか、長い棒をもったひとや、写真をとりつづけるひとなどが多く、そして次第に遠目からではそこが見えないほどの野次馬が集まりだしてくる。長い棒持った警官がまるで侍のように見えて、影の一つが噴出した。丁度、写真をとっていた警官がその棒にかしずくような形に移動したからだ。まるで介錯を待つ姿のように見える。しかし、それもすぐに野次馬に埋め尽くされ見えなくなってくる。
 そして、とうとう現場は四つの影からは見えなくなった。
「意味はあったのかな?」
「結果は変わらない。ただ進むことができる可能性ではある」
「ある意味、自殺っすよね」
「そそれそれは、ねねねねネガティブすぎるような気も……」
 街が流しつづけた赤い血は、既に海に流れだし、黒くそして青い顔色の悪い空が姿を見せ始めている。まばらに見える星が、頼りなく光り、街はその光りすら奪おうと必死で光り始める。
「意味は変わらない。どうせ我々は終わるのだから」
 夜になりかけた空に、一つ流れ星が流れる。
 
 ヒサキはあまりの大事加減に、目を丸くしていた。救急車の中というのは意外と広かった。イメージではもっと手狭で、こまごまとしているという意識だったのだが。
「ここは痛いですか?」
「大丈夫です」
 曇りガラスの向こうで、日が沈んでいくのが判る。検査を軽くするからといわれ、体中を確認されるものの、別に車に引かれたわけではないのでヒサキに外傷は見当たらない。
 無理やり倒れこんだので、左手のをすりむいたのと、少し背中を打ったことぐらいである。頭は打ってないから大丈夫だと思うが、白衣をきた男はそれを聞いてはくれなかった。
 無線では色々とやり取りされているが、いまいちヒサキには何を話しているか判らなかったし、何かを言われているのかとかんぐればかんぐるほど、申し訳ない気分になるのだった。
 しかもサイレンを鳴らし、車をどかしながら爆走する救急車のなかとくれば、申し訳なさは既に最高潮でもある。
「胃が荒れてますね。もどしましたか?」
 学校で吐いたことまでばれる始末。顔を真っ赤にしてヒサキは俯く。できれば今すぐ走って逃げたい。
 救急車の中で繰り広げられる拷問を受けながら、ヒサキは前を行くステラが乗っているであろう救急車を思う。口の中に、鉄をつきこまれ、無理やり押し広げられている。
「舌だして」
「あぇー」
 一緒に声が出る自分が情けない。精一杯伸ばしたべろを押さえられながらヒサキは、ステラもこんなことをされているのかなんて頭のすみっこで想像していた。
 
 大丈夫そうだけれど、一応もう一度ちゃんとした検査を受けてくれ。そういわれて、ヒサキは診察室に運ばれた。ステラの姿が見えないまま、ヒサキは診察室の椅子に腰をかける。
「一緒に運ばれた女の子なら、君と一緒で特に目立った外傷はないから安心しなさい」
 開口一番に、考えていたことを見抜かれてヒサキは驚きを隠せないまま、医者に向き直る。そのヒサキの姿をみて、医者はゆるく笑った。
「どこも痛くはない?」
 そこでやっとヒサキは、医者が女性だったことに気が付く。
「はい」
 一度怪我をしている左手をとられるがそれだけ、医者は一度うんとうなづき、
「はいオッケ。かえってよし。そうそう、あとで警察から連絡あるから」
「え? どうしてですか?」
「あんたらは轢かれかかったのわかってる? 何も無かったからって、それでお終いなんて事にはならないの。あたりまえでしょ」
 それもそうか、ヒサキは納得して頷く。めんどくさそうなイメージだけが付きまとった頭をふって、一礼。ヒサキは診察室からでようと歩き出す。
 引き戸の扉があくと、その向こうにステラが立っていた。
「あ……」
 かける言葉を見失い、ヒサキはどもる。リノリウムの床を、からから乾いた音で放送がこだましている。廊下を挟んだ向こう側からの独特な音がヒサキの耳に届いた。
「……」
 脳裏によみがえるのは、ステラのあの匂い。小学校以来触ったことのなかった女性の感触を思い出して、ヒサキは戸惑う。
 既に心臓は医者が見たら卒倒しそうなほどの速度で血液を送り出してることだろう。赤く染まりそうな視界の向こうで、ステラは無言でヒサキを見つめている。
「ありがとう」
 不意に紡がれた言葉が、過去の記憶に重なる。
『ごめんね、ありがとう……』
 その赤は、夕日の赤だっけ。小学生の手のひらは、小さくですぐに赤く染まってしまう。ああ、かき集めたって足りやしないのに。ごめんねとありがとうを聞きながら、諦めなければきっと叶うと信じてたあの頃、必死でかき集めていた赤い色。それは、夕日の赤なんかじゃなくて、
 血――
 届かなくて。どれだけ走っても、伸ばした手は彼女を掴むことは出来なくて。
 足りなくて。どれだけ泣き叫んでも、流れ出すその赤い色をこの手は塞き止めることが出来なくて。
 それでも、必死にただ大事だったというそれだけの心に必死にしがみついて。それでも、諦めるわけには行かなかった。大人が叫ぶ声なんか聞こえやしなかった。手が赤く染まっていく。
 その赤は、夕日の赤だっけ。
 ドロリとした、彼女の感触。真っ青になっていく唇から最後に漏れたのは、
『もういいよ、もう無理だよ』
 諦めの言葉。
『ありがとう』
 突き刺さったのは、無力という抗いがたい強大な剣。赤い赤い剣。
 ぐらつく視界の中、ステラが走ってくるのが見える。
 差し出されたステラの手を見ながら、傾ぐ視界は暗転する。
 きっと、君の手だって届きやしない。



 しまった、ヒサキかっこよくなったきがした。
 もっと、人見知りのオタクっぽいキャラの予定だったんだけど。何があった……。

 正直、(杉の)精子でお汁が溢れちゃうは聞き飽きた。
 もっと新しいネタはないものか。

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