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今日の三題話

■連載中のlog
「太陽」「火」「かつら」
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 色は、光を当てられることによって存在することができる。赤は、赤以外の色を受け入れることで赤として存在する。その色は、その色以外の色を受け入れているということだ。つまり白は何者も受け入れない色である。太陽光であれば太陽光を、電灯であれば電灯そそのまま反射する。それは潔癖ではなく、鉄壁とでも言おう存在であり、それこそが高貴であると信じて疑わない幻想を抱かせるのだ。本来なら黒がどこまでも優しく、美しいはずなのに。
 白い人は、その白というものを体言する存在でもある。本来進むべきものが交差した結果、現れないものが現れた。受け入れられないものがその場にいるという事実は、こちら側からも受け入れないということ。つまりは白、そのものである。
 白い人は、何者も受け入れない。彼らには、彼らの生活が存在しているのだから。
 
 そこまで読んで、ヒサキは本を閉じた。書かれていることが良くわからなかったというのもあるけれど、それよりも足音が図書室に近付いてることに気がついたからだ。
 かなり大またな感じのするタイミングで、足音は確実にコチラに近付いてきている。ヒサキは、一瞬顔を強張らせ思案するように視線を彷徨わせた。
 生徒なら要らぬ誤解を受けるかもしれない。何せ、沢村ステラと顔を突き合わせて本を読んでいるのだ、只でさえ噂話に飢えている人間が多い中で、今の状況が生む結果は、火を見るよりも明らかである。
 注視するように、廊下に視線を送るヒサキを、ステラは一瞥した。何か言いたそうな視線だったが、すぐに本に視線を戻すが無言。そして、手元の本とヒサキを見比べるように顔を何度も往復させた。
 廊下を見つづけていたヒサキだったが、そのステラの行動に彼女を見る。
「どうしたの」
 声をかけると、ステラが本を差し出した。見やすいように、ヒサキの方向に向けられた本には彼女の細い指が一箇所を指し示している。
「僥倖」
 思わず指し示された単語を呟くと、本が引かれステラの手元に戻っていった。
 そこでやっとヒサキは、ステラが漢字を読めなかったという事実に突き当る。「別に、日本語がペラペラという訳でもないのだな」と一人、ヒサキは納得した。
 静かに読書に戻ったステラの後ろ、廊下を歩く足音が通過していく。足音のリズムは至極ゆっくりだけれども、何故だか急いでいるようにも聞こえる。ステラの頭越しに見えている、廊下と図書室を隔てる壁、そこを歩いているのが判った。
 そのまま入り口へと足音は移動し、そして止まった。
 今すぐ立ち上がり、逃げ出すという選択肢も考えられたが何故だかヒサキにはそれが出来なかった。まるで椅子に張り付いているかのように尻が離れない。頭の中は、既に言い訳を考えるだけで精一杯だった。同じ部活だから、偶然、別にやましいことはしていない、次々に生まれては頭の中で渦巻く言い訳にヒサキは頭を抱える。このままでは禿てしまいそうだ。久しぶりに使った頭が悲鳴をあげる。将来はかつら決定ではないだろうか。バカらしいことを考えても、やはり頭の中の半分は言い訳を作りつづけることに必死だった。

 図書室の鉄扉は引き戸だ。レールの上をゴロゴロと転がる重苦しい音と共に、廊下の喧騒が流れ込んでくる。鉄扉を凝視するヒサキには、その音がまるで死刑囚の最後のベルの音にすら聞こえた。
「おや、こんなところにいたんですか」
 ヒサキはその軽快な声に、聞き覚えがあった。扉をくぐるようにしてはいってくるその身長の高さは、紛れもなく芳田の長身。
 生徒ではないことに一瞬胸をなでおろすが、すぐに別の可能性がヒサキの頭をもたげた。
 先ほどまで、芳田を取り巻いていた学生達の姿がみえないのだ。逃げてきたのか、それとも学生達は休み時間へと戻っていったのか、逃げ出したヒサキには判らない。
 そんなヒサキの悩みをよそに、芳田は近付いてくる。長い足はそれだけで進む速度が違うもので気がつけばヒサキの目の前に立っていた。
「どうも」
 挨拶をしなければという、反射的な思考にしたがってヒサキは頭を下げた。その姿をみて、ステラが顔を上げる。
「沢村ステラさんに、加賀ヒサキくん。部活は本日校外活動ですので、正門に六限目終了後集まってください。ああ、一年生は五限目まででしたね。そうですね、部室は開いていますのでそちらで時間を潰してください」
 芳田は机に覗き込むようにして、二人に言う。
 丁寧な言葉遣いと、自然な笑み。物腰からも、やはり人気が出るのは仕方がないのかもしれない。
「今日は二年生も五限目ですので、問題はないでしょう」
 それでは、と言い残し本棚へ向かって歩いていく後姿は、やはり絵になっていた。
 その姿を確認するように見送っていたステラは、もう用事がないというのがわかるとまた本へと視線を戻す。どこまでも無言。ヒサキは居心地の悪さに一度身をよじった。

 窓の向こうでは、喧騒が鳴り止まない。カーテンの不規則にはためく音と、それに合わせて響く鉄扉の重たい音。気をつけて耳を澄ませば、芳田が歩く足音が聞こえそうなほどに静寂があたりを包んでいる。
 けれど、ヒサキはその静けさの中で音を聞こうと必死だった。もう、開かれた本はみていない。意を決するとヒサキは一度大きく息を吸う。風にめくられるままになった本を、たたみヒサキは立ち上がった。
 椅子がゴムの床に引っかかりながら引きずられる。想像以上にやかましい音に、立ち上がった気力がどこかに言ってしまいそうになった。
「ご、めん」
 呟くが、ステラは顔すら上げていない。その姿にヒサキはそんなものだろうと心の中でため息をつく。歩き出せば、足にゴムの感触。視界の端に映ったのは残り時間3分を告げる時計の針。
 足が進む毎に、秒針が刻まれる錯覚にヒサキの足は自然と早くなっていった。

「おや、ヒサキくんもこんな本を読むんですか」
 本を戻しに棚に戻ると、芳田がそこに立っていた。先ほど、机を覗き込んだときに本は見えていたはずなのに、わざわざこんな場所で言うことだろうか。ヒサキは一瞬疑問を覚えるが「ええまぁ」と無難な返事をして本を戻す。
「相模先生の本は読みづらいでしょう。本来、こんなものは学校には置かないんですけどね。流石に寄贈されてしまうと置かざるを得ない」
 芳田はそういって、おかしそうに笑う。
「でもまぁ、資料としては一級品なんですよ。これでもね」
「そうなんですか」
 気のない返事だと、自嘲気味にヒサキは笑う。そんなこと判っているといった具合に芳田はめがねを一度指で引き上げて棚を見る。視線の先には、夕日の街シリーズではなくて、別のシリーズ。
「酷い幻想です。覚めない夢はないとはいえ、覚めた後は酷い気分になる」
「はぁ」
 もう、芳田が何を言っているかが判らない。ヒサキは芳田を見上げ、その言葉に相槌を打つ。
「もう、アレは見ましたか?」
 その問いに、ヒサキはすぐに答えられなかった。芳田が何を言っているのかに気がつき、一瞬言葉を詰まらせ、そして無言で頷く。
「アレが何かも判らないのに、あんなことをしていいのか。私達はそろそろ決めないといけないのかもしれません。まぁ、少なくても今やれるだけのことをやることには、意味はあるんでしょうけど」
「行動することに意味があるんですか」
 そういうと、芳田は一度ヒサキをみて柔らかく微笑む。ヒサキは一瞬だけ、その笑顔の奥に変な違和感を覚えた。
「いいえ、頑張ることに意味があるんですよ」
「頑張っても、報われない事だって在ります」
「本当に、頑張って、頑張りぬいて、血反吐を吐いて、指一本動かせなくても諦めないで頑張ると、そこに魔法使いが現れて助けてくれるというじゃないですか。この街にある都市伝説です。あと、この夕日の街シリーズの一巻でも考察されている」
 眉唾もいいところの御伽噺に、ヒサキは噴出しそうになる。頑張っても何も出来ないことなんて、世の中にはいくらでも転がってるじゃないか。人はどうあがいても空すら飛べやしないのだ。
「魔法、使いですか」
「信じるかどうか、それは本人が決めることですが。まぁ、世の中結果だけではない、と思う分にはいいんじゃないでしょうかね」
 そういって芳田は歩き出した。ゴムを叩く少し硬い音がする。
 時計が時間を刻む音がした。
 それでも、結果しか残らない。ヒサキは無表情の顔を芳田の背中に向けて、静かに佇んでいた。



書く力を鍛える良い方法
以下5つの表現を封印する
・三点リーダ(…)
・ダッシュ (―)
・擬音 (ヌメリゴッ)
・エクス蔵女ーションマーク (!)
・クエスチョンマーク (?)
この状態で普段書いているものを表現しようとすると
もうのた打ち回りたくなるくらい苦しい 。

 取り合えず、試してみたけれど。特に苦しいとは思えなかった。表現するのに数行多くかく必要が出てきたりする程度。何の訓練にもならなかったです。ひとそれぞれですかね?
 まぁ、別にやらなくていいと思う。

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