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今日の三題話

■連載中のlog
「礼節」「公園」「のり」
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 慣れた、という言葉は自分にとっては縁遠い言葉だ。ヒサキは、既に自分というネタを共有することで仲良くなったクラスメート達を眺めていた。彼らは慣れた。自分という帰宅部の部員が居ることに、そしてクラスメートに。しかし、一人ヒサキだけはなれていなかった。全体的には、どことなくぎこちなさを混ぜた新しいクラスの雰囲気。その雰囲気の半分以上が、ヒサキは自分自身から出てるきがしてならなかった。自分だけは除け者かとおもうが、特にそう言うわけでもない。いじめをうけるでもなく、かといって無視をきめこまれてるわけでもない。どちらかといえば、対応は良い方だとも思う。クラスはのりが良い、多分それがヒサキにとって一番なじめないところなのかもしれない。バカ騒ぎがにがてなわけでもないし、付き合いが悪いともおもっていない、ただ人が居るだけでなんだか体の中心あたりに固まりが生まれる。それは人数が多ければ多いほど増えていき、クラス全員ともなると、ヒサキにとっては死活問題なのだ。

 気分が悪い。というよりは、嫌悪感。公園でいちゃついてるカップルを見るような、あの嫌悪感だ。多分、羨望や妬みも混ざっている。そんな自分の感情こそが、また吐き気を促す。
 ヒサキは、馴染んでいくクラスの灰汁の様だと自分を評価し苦笑いを一つ。自分が居なくなれば、完璧に仲良しクラスが出来上がるだろう。
「どうした、人が集まらなくなったのに浮かない顔だな」
 前に座っていた男が振り向いて笑う。馴れ馴れしさにはなれている、ヒサキはともあれば引きつりそうな頬を無理やり押さえ込んで笑う。しっかりと笑えているだろうか。
「はは」
「帰宅部やめた先輩が、俺の部活にいるんだ」
「は……」
 笑いが止まった。ヒサキの体の動きがぴたりと止まる。意識して動かしていた体の動きが、途切れた。必死で作った笑顔も元に戻る。
「なぁ、加賀君。先輩は、独りで扉が開けられないって言ってる。刃物が持てないって言ってる。何をしてるかなんて、言いたくないならいわなくていいし、先輩からも聞く気も無い。けど、もし無理やり入れられていて、辞めたいけど行く部活がないってならウチの部活にきてくれよ。歓迎する」
 ヒサキは、目をあわせられなかった。だから、目の前に座る彼がどんな表情をしてるのかすら判らない。それでも、その言葉は嬉しかった。
 耳に始業のチャイムが届いた。
「ありがとう」
 前を向こうとしている男に、ヒサキは声をかける。鳴り響くチャイムのなか、自分の声は彼に届いただろうかと、その背中を眺めていた。
 扉が開く音。教師が入ってくる。授業は、芳田が担当する授業。ヒサキは、静かに扉を見た。
 変わり果てた芳田の姿にクラスが騒然としている中、ヒサキは独りノートを開き授業を受ける準備をしている。芳田が投げかける視線を無視し、ヒサキは静かに教科書を開く。痛いほどの視線に、ヒサキは俯くほかなかった。間違いなく自分がしていることはばれている、それがよかれわるかれ少なくても芳田の思惑通りではないのは確かだ。
 芳田が自分を見ていることよりも、芳田が自分を見ていることをクラスの人間に見られたことのほうが厄介な気がする。ヒサキは、前に座る男の背に隠れるように身を縮め、静かに授業が始まるのをまった。

 昼休みにもなると、それなりに図書室には人が来る。全体的に、静かさを好む人種が多いが、別にそれだけでもない。図書室はボード部という、ボードゲーム全般を扱う部活が部室にしている。それゆえ、本以外にも将棋やオセロ、チェスなどといったボードがそろっていた。中には見たことも無いようなゲーム版とかも置いてある。それ目当てに、外では遊ばないが本を読むのもという人間もあつまってきていた。
 殆どが校庭か自分の教室にいるが、部室のある部活動に属している部員は自分の部室に足を運んでいる。部室は治外法権だ、中には漫画もゲームもテレビも置いてある部室が存在するという話すらあり、仮眠ようのベットから、果ては冷蔵庫に18歳未満お断りな品までそろっているという噂がある。それゆえ部室は部員の天国であり、部員たちの交流の場にもなる。だから、部室は取り合なのだ。部室に教師は入らない、例え中で何をしようとも完全に切り離された場所なのだ。責任はすべて部長にあり、部長は一年間何事も問題を起こさないという結果を出すことで大学への切符を手に入れることが出来るのだ。
 だから、部室がある部員は部室に行く。けれど、ヒサキは部室に行かない。鍵を持っていないので、向かったところで入れない可能性、そして入ったところですることは無い。あの部室は、殆ど何も無い。志茂居が食べたお菓子の袋と、たまに勉強した後に出る紙くずと消し屑ぐらいなものだった。
 だから、ヒサキは図書室に来ている。教室よりは部室にいたいが、部室があけられないから図書室に居る。そう、それだけだ。けして、絶対に、何があっても、沢村ステラがそこに居るからではない。そうだ、ヒサキは頭の中で作り上げた言い訳に大きく頷いて図書室の扉を開けた。
 静かな中に、多少礼節を欠いた笑い声、そしてパチリパチリと将棋の駒が立てる音と、本をめくる乾いた音に溢れている。
 図書室独特のゴムと紙の混ざった匂いがする。どこの教室にいってもかげない匂いに、ヒサキは一度鼻をスンとならした。
「おはよう」
 聞き覚えのある声に、ヒサキは振り向く。
「お、はよう」
 相変わらずの無表情なステラに、たじろぎながら挨拶を交わす。
「志茂居先輩つかまんないんだって。もしかしたら潰れるかも」
 用意していた言葉を、何とか必死で搾り出すと、ステラがヒサキに顔を向けた。
「そう」
 相変わらず無表情だが、ヒサキの言葉に反応して頷いてくれた。
 手には、例のシリーズ「夕日の街」がもたれていた。
「その本好きだね、沢村さん」
「知る必要があるから」
 そういうと、ステラは開いている席に座り本を広げた。小難しい文字が並んでいる本、何が彼女を駆り立てるのかヒサキには検討もつかない。
 自分も本を取ろうと、彼はやはりステラとおなじ本のシリーズが並んでいる棚へとあるいていった。『資料としては一級品なんですよ』といった芳田の言葉が思い出される。
 何の資料か忘れてしまった、見た感じ地理か歴史か。そんなところだろうか。
 一度手にとったことのある『白い人』をとりだす。滑るような、なんだか怪しい手触りがする。初めて触ったときとは、明らかに違うその感触に、ヒサキは本を取り落としそうになった。
「とっ」
 辞書ほどはなくとも、雑誌や文庫本よりは全然大きい。丁度厚めのハードカバー本といったところだろうか。そう、ハードカバーのはずだ。ビニルコーティングをされているか、もしくは紙の厚い表紙。高いのになると、細かい毛みたいなのがついてる変なヤツもある。そんなハードカバーのどれとも似ていない感触を右手に感じながら、ヒサキは歩く。手のひらにかいた汗がジワリと滲んだような気がした。




 Myu氏がweb拍手を貰っていたので、羨ましくなったので導入。


 ネガティブな導入の仕方に、自分の卑屈さが伺えてる。そんな、そこはかとない寂しさを滲ませてみる。
 だいたい、コメント欄があるのだから全く意味が無いといったら意味が無い。
 戯れさ。戯れ。
 ふんだ。

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コメント

 拍手コメントはめったに来ないのですよ。
 というか、拍手コメントは一応私信なのだから、公表しちゃって良いのか?とか考えてしまうヘタレ。

 絵はなんかあいだ空いちゃってテンポ狂ったから保留にして、進んでない天使のほうに時間使おうかと。あれ、マンツーマンの会話が多くて動きがあんまり無いので構図に困ってたりするのですが。
 これこそ私信。

  • myu
  • 2005/05/17 14:58

 淡々と続けすぎた感も。
 天使の方をちゃっちゃと片付けてくれると、ありがたいでげす。
 時期的に、なんだかみんな忙しそうで……私だけヒマなんじゃないかと日々不安に。
 いまこそ五月病診断をうけて、更にヒマにっ!
 更に駄目だ! 私信にすらなっていない。どちらかというと独り言。

  • カミナ
  • 2005/05/17 16:11
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