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今日の三題話

■連載中のlog
「杖」「黒」「大きい」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 一週間も経たずに、ヒサキへの興味は薄れたのか人は集まらなくなっていた。帰宅部のことよりも、自分が入った部に興味がいき始め、話すきっかけなどなくても既にグループが出来上がっている。だから、ヒサキは用無しだった。ネタとしては使い古され、きっかけは既に必要ない。けれど、当のきっかけにされた本人には、いまだクラスの中に友達はいなかった。

 別に、知り合いが欲しいとは思わないヒサキは、人が集まらなくとも一人机に座ってはノートを広げ、ぼんやりと時間を過ごす日々だった。 
 確かに、友人がいれば宿題やノート、グループ分けなど邪魔な障害が無くなるのは事実だったが、そんな些細なことのために知らない人間と仲良くしていかなければならないと思うと、やはり部活の中だけで既にヒサキはおなか一杯なのだ。
 つまり、机の周りに人が集まらなくなったことは、ヒサキにとってありがたいことでしかなく、やっと落ち着いて授業が受けられると、そう考えている。
 そんな矢先、ステラが帰宅部の部員募集の紙を配った。
 今ヒサキは、机の周りに集まるクラスメートという名の、野次馬に愛想笑いと、適当な相槌を繰り返している。
 さすがに、制服がこれだけ大量に回りにあると全く色彩がなくなるのだと、ヒサキは思い知る。肌色と白と黒と赤。いまになって、なんだか湯木の格好の理由がわかる気がする。こんな同色と一緒にいたら、なんだか自分が学生という肉の塊に落ちていきそうで怖い。
 ヒサキは、妄想に目眩を覚えながら薄笑いを浮かべていた。
「あの外人の子の名前なんていうの?」
「目みた? スゴイきれいだったよねー」
「何組?」
「たしか、隣のクラスでみた」
「あkつあ、じゃぁ」
「部員が――」
 五月蝿くて、耳をふさぎそうになる衝動に必死で絶えながらヒサキは周りを見る。赤。白。肌色。黒。赤。赤。白。既に聞こえてくる声は意味を無くし、空っぽになった頭の中で響きわたっている。口を開けたら、響いてる声が飛び出しそうで必死で唇をかみ締めた。
「ああ。うん」
「名前は――」
 うわべだけで返事をして、浮かべる引きつった笑い。胃の中がグルグルと回っている。吐きそうになるのを、涎を飲み込んで必死でこらえる。ステラに迷惑がかからないように、言葉を選び、上手くいけば部員が見つかるかもしてないという淡い思いで人の話を聞く。
 ヒサキは、自分で自分をほめたくなりながら、ほぼ拷問に近い状況を絶えていた。

 結局、帰宅部にどうやって入るのかという質問なんて一度も出なかった。そして、昼休みすら抜け出せなかったヒサキは真っ青な顔色で今廊下を歩いている。
 放課後になる前に、ステラにあって部活のことを言わないといけないことを思い出したのだ。だが、教室から中々抜け出せなかったので既に午後の授業になっている。
 ヒサキは、ステラのクラスと名前をはぐらかすので精一杯だった。だから、無理やり抜け出してまでステラに合いにいけなかったのだ。といってもヒサキが苦労したところで、知っている人間が数人いたので徒労だったのだけれど。
 教室を抜け出し、ステラを探していたが当然のように教室にいは居なかった。
 ヒサキは、フラフラとステラのクラスを抜け出し、人ゴミを縫って歩く。既に午前中の授業で体力を使い果たしているヒサキにとって、廊下をまばらに歩いている生徒達だけでも十分に障害物だった。
 杖が欲しいと思うほど、疲弊した視界に一瞬見慣れた金髪が揺れた。
 曲がり角を曲がったのか、すぐに見えなくなったその金髪をヒサキはフラフラと追いかけ始めた。目的を見つけたとたん、風を感じる。廊下の喧騒も耳にもどってきた。
 疲れ果てていたはずの足取りが、軽快になってくる。右に左に人をよけ、ヒサキは廊下をかけだした。
 金髪が消えた辺りは、ヒサキの予想通りに階段があった。一瞬逡巡したが、ヒサキはすぐに階段を駆け下りていく。屋上は昼休み以外は開放されていないはず、といっても鍵がかかってるわではないが。名目上、屋上には昼休み以外に入ってはいけないという、決まりがある。ステラが守ってるかどうかよりも、もし自分が屋上にいって誰も居なかった場合。そしてそのときを誰かに見られたらなんと言い訳をすればいいのか。「沢村さんをさがしていて」なんていおうものなら、すぐさま話題の的になる。
 だから下を選ぶ。特に長くない休み時間ゆえに、階を渡っているような学生は殆ど居ない。特殊教室に向かう生徒が多いのも当然だった。
 一瞬ステラのクラスが特殊教室での授業なのかとも考えたが、クラスに行った感じではそうでもない気がした。
 一階まで降りるとさすがに息が切れてきたのか、ヒサキは一度大きく息をすって立ち止まる。まるで後ろから追いかけてきたかのように、音が戻ってきた。体育の授業に出る生徒達が、ぞろぞろと上から降りてくるのをよけながら、ヒサキは金髪をさがす。荒い呼吸で、きょろきょろとしているヒサキを訝しげに横を歩く生徒がみていく。
 そんな視線にかまっているヒマは、当然ながらヒサキには無かった。
 荒い息を隠そうともせず、ヒサキは携帯を取り出す。時間は既に、始業2分前を表示していた。一度周りを見回し、戻ろうと足を踏み出す。部員は結局見つからず、ステラも見つからず、体力だけ消耗した自分に、ため息をひとつ。とぼとぼと、階段を上っていった。
 携帯で電話するか。
 ふと、思いついたがすぐに彼は頭を振る。もし教師の目の前で携帯が鳴ればそれこそ目も当てられない自体になる。実際持ってきていけないという決まりはないが、出れないときに電話がかかってくるのは不味い。
 だったらメールを。
 と思いついて、すぐに肩を落とすヒサキ。彼は、ステラのメールアドレスを知らなかった。
 
 階段を移動している学生は殆ど居なくなっている。その静けさが、ヒサキの足を急き立てていた。
 二階と三階の踊り場に差し掛かったときだった。一瞬大きい影が廊下をよぎった。それは、見覚えのある姿だった。丸く大きい影は、行方不明になった志茂居のものだ。ヒサキは、追いかけるように階段を駆け上がる。
 三階の廊下を覗き込むようにして、階段から顔を出したが既にあの大きな影はなくなっていた。すぐ近くが教室だったのだろうか。それとも見間違いかヒサキは、諦めて階段を上る。四階は教師がくるのも少し遅い、それを覚えてしまった一年生がまだ廊下で騒いでいる。その喧騒が少しずつ大きくなってきた。
 おそいとはいえ、時間的にはギリギリだ。人の流れは既に教室へと向かっている。
 流れに乗るようにヒサキは廊下を歩くと、目の前に金色の色彩を見つけた。
「沢村さん!」
 思わず声をかけて、呼び止める。カツリという軽い足音と共に、金髪が慣性に膨らむ。
「よかった……さがしてたんだ」
 思うように整わない呼吸に喘ぎながら、ヒサキがステラの後ろにたった。ゆっくりを振り向くステラの顔は少し驚きに染まっていた。ヒサキだからわかる程度の、微妙な表情。
 何とか息をすって、部活のことを伝えようとヒサキが口を開いた瞬間、
「あのね、湯木先輩が――」
「ステラってよんで」
 やぶ蛇だった。廊下を歩く生徒達の足すら止め、ステラの声は廊下に響いた。



。`ーァ
々 ゚l ……



。`ーァ
々 ゚l モグモグ
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