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今日の三題話

■連載中のlog
「銃」「茶」「厚い」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 鬼が出た。それが、物の怪か獣か今になってしまえば全く判らない。ただ、鬼が出た。
 鬼は、村人を襲いそして食べた。村人は、なす術がなかった。村に一丁しかなかった銃も、剣も鎌も桑も鬼を傷つけることは出来なかった。
 ただ、山から降りてきては村人を手当たり次第に食べるのだ。名の有る侍を用心棒に雇っても、なんの解決にもなりはしなかった。用心棒は端から食われ、賃金を払う必要がなくなったのは、村人の中で笑い種になっていた。
 村人は、いつしか無駄だと悟った。妖怪退治専門の用心棒でもないかぎり、あの鬼を追い払うことはできはしない。しかし、妖怪退治などと銘打ったやからにまともなものが居ることは無かった。

 結局村人は、そして鬼を追い払う術も無く、山に鬼が住み着いたので村から逃げ出す術もなく、ただ村でおびえながら暮らすしかなかった。
 そして、鬼が居ることで村は孤立していった。けれど相変わらず村人は、鬼を退治することも追い払うことも諦め、何事も無いように暮らしていた。
 一人の青年が居た。貧しい家だったが、家族は大層仲がよく幸せにそして平凡に暮らしていた。病弱な妹の世話をよく焼く青年だった。病弱な妹の介護のため、兄である青年は畑に出られず、父親一人で耕す畑には限度があった。
 そして、その家に鬼が来た。あまりにも唐突だったため、青年は腰を抜かし、そんな青年を尻目に鬼は青年の目の前で、妹を食べた。
 泣き叫びながら懇願する青年を払いのけ、鬼は彼の妹を食べ終わるとまた山に戻っていった。家には、空っぽになった薄い布団だけが残っていた。
 青年の慟哭は、村に響いたという。 

 それから、青年は何度も鬼を倒そうと、鍬を持っては山に登り、鎌を持っては山に登り、何度も何度も帰ってきた。殺されるか殺すまで、青年は諦めないと誰のいう事にも耳を貸さず、次第に彼はやつれていった。そして、諦めきった村人達を冷ややかな目で見ながら、彼は毎日山に登ってはボロボロになって帰ってくるのだ。
 そして、いつしか彼を止めるものは居なくなった。
 青年が諦めることは無かった。既にこれ以上やつれることが出来ない、そんな風に言われるほどボロボロの彼は、それでも足を止めることをしなかった。綺麗な色をしていた着物は、既に血が染み込み、茶色とも黒ともつかない色一色に染まっており、骨と皮だけになってしまった体が何故そこまで動くのかと、誰もが不思議に思うほどだった。髪は抜け落ちかけており、目は虚ろで焦点も合っていない。けれど、彼は一度も目的を失わずその拳を振り上げていた。
 幾度目かの冬、雪に埋もれた村に異変が起こった。山から響く音が聞こえなくなったのだ。
 村人はとうとうかと、自分の家から山を見上げていた。村人の誰もが思った。
 そして、だれともなく気がつけば彼の家に村人が集まっていた。
 妹の後を追えたのだから、これでよかったのかもしれない。あいつも、やっと天国で妹と一緒に慣れて喜んでいるはずだ、などとうわべだけの言葉を並べ、老夫婦に言葉をかけている。
 しかし、老夫婦は何も言わずその言葉を聞いているだけだった。
 そんな村人達が集まるところに足音が近付いてきていた。
 青年だった。鬼の死体を背負い、青年は村人達が見守る中家に近付いていった。
 青年は獲物を取ったといわんばかりに、鬼を両親に見せた。
「どうやって、鬼をうちたおしたのか」
 老婆が言うと、青年は携えていた剣を見せた。何色ともいえない色をした刃は、肉厚で見たこともない形状だった。短く、そして厚い。
 青年は語る、いつものように山を登る途中見慣れない女がいた。その女が、自分のこの剣をくれたのだというのだ。その女について、男は女だということと、剣をくれたということ、それしか覚えておらず。容姿も、具体的にであった場所もおぼえてはいなかった。
 ただ、女がいった言葉は覚えているという。女に声をかけると、ただ一言こういったのだと、
「この剣を使え、お前は諦めなかった、その結果だ」
 物語はそこで終わる。
  
 ヒサキは、携帯を握り締めながら帰路についていた。授業が終わり、教室を飛び出して保健室に向かったのに、保健室には誰もいなかった。
 荷物はどうしたのだろうと、ステラのクラスにいくものの、例の休み時間の一件の噂はまるで爆風の如くに広がっており、大騒ぎになった。
「彼が、あの。ほら、さっきいっていた」
「ああ、廊下で。意外とフツーじゃん」
「聞いた?」
「へー、沢村をねぇ」
「マジでー?」
 ぶしつけな言葉を投げかけられながら、ヒサキは必死でステラの荷物のことを聞いた。
 一応同じ部活だということが判ってからは、少し減ったが。いまだ、ステラのあの発言は誰もが告白だと思って盛り上がっている。とうのヒサキも、もしかしたら告白なのかもと淡い期待を抱いていた。周りからこれほどまでに言われれば、嫌でも意識させられる。
 しどろもどろで、ステラの机を聞くと、人の隙間で道が出来た。その先にある机にある鞄はない。ヒサキはそれを確認すると、教室から出ようと踵を返した。
 更に湧き上がるギャラリー。ヒサキは、人ごみから必死に逃げ出し、ボロボロになった体を引きずって歩いている。手には携帯、ステラに電話をかけようか迷い、いまだにかけられられないままの携帯だ。
 部室にはいなかったから、帰ったかもしれない。でも、もしかしたら。
 ヒサキは、携帯を開き電話帳を呼び出す。すぐに、ステラの名前が液晶に踊った。
 通話ボタンを押す瞬間、携帯が震える。
「のあっ」
 驚き取り落とした携帯が、地面に落ちた。通話ボタンを押さなくて良かったとヒサキはため息をつく。地面で、ぶるぶると震える携帯を見下ろしながら思う。
 液晶には、沢村ステラの文字が躍っていた。それを認め、ヒサキは驚き携帯を取り上げる。
「はい、加賀です」
 一瞬の無言の間が、永遠に感じられる。嚥下した涎が向こうに聞こえていないか、不安になる。手が震えている。電話の向こうで、息遣いが聞こえた。
「ステラです」



 Q:サイトマスターの神奈隆平の心はいつも18歳。
 正解には、何もありません。不正解には、やっぱりなにもありません
 


 しかし両方ともただのweb拍手。不正解。

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