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今日の三題話

■連載中のlog
「波紋」「周辺」「作為」
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 肌にかすめたのは。血の匂いの混じった風。吐き尽くし、空っぽになった胃がキリキリと痛み、ヒサキは顔をしかめる。
 離れ、こうして落ち着いて考えると違和感がある。
 不快感、恐怖、ソレが始めて見たときよりも少ない。見ただけで、体を切り刻まれるような、脊髄を掻き毟られるようなあの感覚が無い。
 白い固まりだとおもっていた目の前で広がっていた三角が、ゆらゆらと揺れだす。そして、次第に闇に溶けていく。中央から、波打つように。中央から広がる波紋にあわせて、ゆっくりと薄れていき、そして消えた。
 やはり、あのときの感じた感覚とはちがうとヒサキは思う。荒い呼吸の裏で、触られたときの感覚を思い出す。

 アレは確かに不快感や恐怖をいったかんじをうけたが、それ以上に緊張、そして敵意を感じた。
 まるで、自分がアレと相対しているときの感覚を、数十倍に高めたような感じ。
 ヒサキは、口の中にたまっている涎を嚥下すると、立ち上がる。ヒサキの前には、湯木と相羽が立っていた。奥の、「白い人」の近く、賀古井とステラがナイフを構えている。志茂居はと、あたりを見回すと、ヒサキの後ろに立っていた。
「後輩、大丈夫か?」
 湯木が振り返ってヒサキを見る。湯木に、静かに頷いて背を伸ばす。大丈夫だと、自分に言い聞かせながら、ヒサキは周囲をみまわした。周りには「白い人」はいない。
「なぁ、あいつらってあんなに動いたっけ?」
「ううん、初めてみた。くっついたのかな、あれ」
「いや、くっついたつーより、なんか出したってかんじだったな。他の奴らは、下がっていったように見えたけど」
 相羽と湯木が話している。と、ヒサキは一瞬力が抜けよろめいた。視界が傾いたあとに、気がついても遅かった。世界が傾く、手を伸ばしても誰も気がついてくれない。相羽と湯木の背だけが見える。
「あ……」
 と、声が出た瞬間、体に衝撃が走り体が制止した。驚きの表情のまま顔を上げると、志茂居がヒサキを支えていた。一瞬、志茂居の肩に光るものが見えて驚いたが、すぐに見えなくなる。
「だだだ、だいじょうぶ?」
 志茂居の言葉よりも、その肩にまるで「白い人」みたいにぼんやりと光っていたものが気になってヒサキは言葉が出なかった。
「どどど、どうしたの?」
 ヒサキは肩に「白い人」が、とはいえなかった。口を噤み、顔を振って答える。湯木と相羽の隙間から、賀古井とステラが振るう銀弧が閃く。光の無い世界の癖に、「白い人」は白くみえる。光ってるわけでもないくせに。まるで、背景だけを覆い隠されたようなそんな感覚、床も壁も図書室のソレなのに輪郭いがいが判らない。
 まるでアニメとかにみるような変な世界のように、異質なくせに見慣れている嫌な感覚だった。
 持っているカッターに力をこめる。力を受け震えるように、カッターが乾いた音を周囲に落とす。強く握ったカッターに熱、呼吸するたびからだの感覚がもどってくる。
「なぁ、やばくないか」
 湯木の言葉に、ヒサキは顔を上げる。「白い人」が賀古井とステラを囲んでいる。相変わらず、二人は殆ど無表情でナイフを振るってはいるが、白い人の数に少しずつ押されている。
「後輩、キツイなら志茂居から離れんなよ」
 その言葉を残し、相羽と湯木は走り出す。大丈夫だ、と抗議の言葉を上げる前に二人は既に「白い人」の群れに飛び込んでいた。
 踊るように銀弧が閃く。ソレはまるで、新体操のリボンのうに完璧な曲率を持って光の残像を残していく。そして、それに重なるように、あまりに実直で無骨な銀線が走る。ただ切り裂くための、必要な最低速度と、必要な最低距離。
 線が数回閃いた後には、もう「白い人」の数は減り、囲まれていた賀古井とステラの姿が見えた。
「どどど、どうして部室こなかったの?」
 志茂居の言葉にヒサキは振り返る。
「え?」
 彼は、言われて携帯を取り出しメールを確認する。たしか、授業が終わったら部室にくるようにという連絡だったはずだが……、読み違えていたのかとおもったが、たしかに「連絡:授業が終わったら、部室に集まるように。 賀古井」と書かれている。
 確かに、昼食時に集まれという意味にも取れる。もしかしたら、皆集まってたときに自分は昼飯をたべ図書室に向かっていたのか。思い至り、ヒサキはうなだれた。端山への罪悪感から、教室にいるのが苦痛だった。せかせかと図書室に向かったからいけなかったのだと、ヒサキはため息をついた。
 その瞬間だった。
「ぐぁ!」
 湯木の叫び声。驚きに顔を上げると、減っていたはずの「白い人」が四人を囲んでいた。そして、囲めるほどに増えている。ヒサキの場所からは、もう四人の姿は殆ど見えなくなっていた。
「先輩!」
 思わず駆け出したヒサキの肩が、とんでもない力で押さえ込まれる。軸足を支点に、振り上げた足から慣性が逃げていく感覚。
「うわっ」
 悲鳴をあげても既に遅く、ヒサキの体は踏み出した足を軸に周っていた。倒れると思った瞬間、体が止まる。確認するまでもなく、志茂居だった。
「ななななな、なんの用ですか」
 言っている意味がわからず、抱えられたままヒサキは顔を上げる。
 志茂居はヒサキをみてはいなかった。視線の先を追いかけるとそこには、
「芳田先生……」
 窶れたすがたは、全く精気を感じさせずソレこそ死体のようにゆらりとその場に立っている。気配のなさに、呼吸すらしていないのではとかんぐってしまうほどだった。
「これ以上はまずいんです。これ以上、君たちに武器を振り上げてもらうわけにはいかないんですよ……説明はなしです。今すぐ、武器を捨ててここから出てください」
「こ、こと。断ります」
 志茂居の手の力が緩み、ヒサキは自由になった。芳田は、全くヒサキなんか見ておらず、志茂居を睨んでいる。いや、志茂居の肩? ヒサキが疑問に思った瞬間、叫び声が飛んできた。
「志茂居! 行け。私たちはいい。加賀ヒサキと……」
 何か重たいものが落ちる音。視線をずらすと、ステラが「白い人」の囲いから飛び出していた。
「沢村ステラを頼む」
 ステラは、立ち上がると覚束ない足でヒサキのほうへと走り出した。
「芳田教頭、何を知った?」
 呟くような賀古井の声が、底冷えするような温度をつれて届く。その声に、ヒサキは体中の血液が冷えていくような感覚に襲われる。
「すべてを。もう、近付きすぎなんですよ。これ以上殺させるわけには行かない。貴方達のためにも、また『白い人』達のためにもです」
 言いながら、振り上げた芳田の手。作為的な笑みを貼り付けまるで、煙のようにゆらり、と振り上げた手。ソレを合図に、大量の足音が聞こえる。
「なななな、なんだ」
「芳田、貴様!!」
 賀古井の声。ヒサキの前に姿勢良く並び始める黒い服。訓練され、まるで……そうまるで、
「軍隊?……え?」
「もう一度言います、やめなさい」
 ヒサキは、生まれて初めて銃口を真正面から見た。現実味が無い感覚に、意識がついてきていない。真っ白になった頭で、ヒサキはただ立ち尽くしている。なんで軍服のような服に身を包んだ、訓練され統率された団体が目の前にいるのか。なぜ自分は銃口を突きつけられているのか、なぜ? なぜ? え?
 疑問から先に進まない思考を切り裂くような、
「ヒサキ!」
 ステラの叫び声が上がる。向けた視線の向こう、ステラが腕を極められてつかまっていた。
「な!」
 無意識に走り出そうとした瞬間、銃口が構えなおされる。嫌な鉄の擦れる音、トリガーに指がかかる、軽い音。
「動かないでください。生徒を殺したくはありません」
「よ、よよよ、よくいう……、銃を突きつけて殺したく、な、なないなんて」
「志茂居! かまわん、止まるわけにはいかない」
 賀古井の声。後ろで頷く気配。
 暗闇というよりは、一面黒塗りの世界。まるで、画像処理で背景だけを黒く塗りつぶされたような黒い世界。吐き気がするような空気で覆い尽くされた、闇の空間に、
「う、うん。行くよっ」
 光りが爆発した。



 Q.萌えどころは、湯木×ヒサキ。ショタの賀古井である。

 正解したら、答えがわかる。外れても答えがわかる。
 正解。web拍手。俺。喜ぶ。片言。

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