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今日の三題話

■連載中のlog
「日光」「揺れ」「交差」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 動くものは、校舎の壁を伝う風ぐらいだった。ともに踊る窓枠は奏でる硬質なリズムは、既に校舎のコンクリに何度も染み込んでいる。
 賀古井が驚くという、その事実が既にヒサキにとっては驚きの事実であり、賀古井は驚き、ヒサキはそれに驚き、驚きは驚きを加速させ、時間すらも停止させていた。
 窓枠が鳴らす三拍子は、廊下に通じる扉にも届き共に重苦しいが楽しげな不思議な音楽を奏でつづけていた。ゴム底を通って伝わってくる床の冷たさと、制服を貫く机の温度がじわじわと体力を奪っていく。交差させ、組んだ指が痛みに震えた。
「加賀ヒサキ、いま何と言った?」
「道端で、あの空間に出くわしました」
「加賀ヒサキ一人で、か? それとも沢村ステラは一緒だったか?」
 ステラに何か関係があるのだろうか、ヒサキは首を傾げながらもあのときのことを思い出す。

 うるさいと、叫ばれたあのとき。逃げ出して、でもやっぱり気になって戻ったときのことをヒサキは思い出す。
 交差点の中央で、ステラを抱きかかえていた男。意識なく、うなだれたステラ。白い人と、駆け出した時の頬撫でる風を覚えている。
「はい。沢村と、あともう一人知らない人が居ました」
「!」
 二回目の驚きは、更にスゴイ表情だった。見開いた目と、青ざめた顔、かみ合わない歯がカチカチと嫌な音を立てていた。
「ぶ、ちょう?」
「加賀ヒサキ、そのときのことを詳しく教えてくれ」
「わかりました……」
 流石に喧嘩をしたというか、うるさい、などといわれたところは言わなかったが、後は覚えてる限り細かくヒサキは伝える。
 歩くごとに、違和感が濃くなるあの感覚と、見えた星。中央で倒れてるステラと、ソレを抱きかかえる男のすがた。余すところなく、記憶を探りながらヒサキはしゃべった。
 こんなに一生懸命言葉をしゃべったのは、久しぶりだとヒサキは頭の隅っこで思う。
 すっと、日光が細くなる。雲が太陽を隠したのだ、一気に体感気温がさがり、ヒサキは身震いした。
 同時、部室の扉が開いた。
「おはようございます」
 ステラが部室にはいってきた。先ほどのことをステラにも聞くのだろうかと、漠然と考えていると、賀古井は特に何をするでもなく考え始めていた。
「加賀ヒサキ」
「はっい」
「間違いないんだな?」
「はい、間違いないです。なんなら……」
 ヒサキは、沢村に――そう言おうとした瞬間、目の前に手を広げられた。賀古井の小さな手のひらが、余りにも大きな壁に見える。
「そうか、近付かれていたのではなかったか、近付いていたのだ。ということは、今までも……、まぁいい、いずれ解るはずだ。今回は捨てるしかないな」
 ぶつぶつと賀古井は呟きだす。何かを必死で考えている。失敗したという落胆の色と、どうにかしなければという焦りのいろと、とうとう答えを見つけたという喜びの色が混ざった、複雑な表情。
「加賀ヒサキがあった男は、多分帰宅部に所属していた卒業生だろう。大体めぼしもついている。問題ない、感染したわけでも、原初でもない」
 そうですか、とヒサキは答える。安心した表情と、ため息の演技はばれていないだろうかと、一瞬よぎるが表情が崩れる前に考えをかき消す。
 目の前に座っていた賀古井は立ち上がると、携帯を取り出し窓際に歩いていった。
 ステラをみると、対辺の椅子に座りいつものように静かに俯いている。
 することがなくなったヒサキは、やはりいつものように所在なさげに周りを見回すことしか出来なかった。
 
 問題はなかった。賀古井は携帯にメモをとりながら考える。そう、問題はなかった。そして、とりあえずの予定はずれなくすすんだ。芳田の連れてきた軍隊らしきもののことや、あの銃のこと、それはあまり突っ込まれていい話題ではなかった。
 このまま、当分の間忘れてくれれば、と賀古井は考える。彼は、沢村ステラが予想通りの存在だったことに半ば安心し、その存在に半ば恐怖した。
 芳田が引き連れてきたあの団体は、間違いなく有羽家という大家の施設隊だ。多分軍というよりは、有羽道場の門下生一同といったところか。自分の考えに賀古井は一度頷く。
 銃器は、見たところどこの国も所有していないタイプ。見た目はXM−8に酷似していたが、どこか違う。もう少しスマートにしたような印象に、賀古井は首を傾げる。
『やはり、あちらの空間専用といったところか。有羽も金だけはある……しかし、有羽にそんな技術力は残っていたか……』
 見下ろした校舎からは、運動部が走り回る姿が見えた。声も窓越しですら聞こえてくる。夕日に赤く染められている生徒達を見下ろしながら、賀古井は考える。
『都紙がかんでるか、それともACIか、だいたい有羽が芳田の言うことを聞くとは……』
 予想外は余りにも恐怖を生む。予定から大きく外れた計画ほど不安定で諦めを含んでいるものはない。けれど、それでも、賀古井の口元には笑みが張り付いていた。凶悪で、残忍で、けれどどこにも人間味を感じられない笑みを。その笑みは、楽しくなってきた、と如実に語っているように見える。
『そうか、芳田が真実を語ったのか。都紙が語るわけはない。ということは、やはり芳田はユキ経由といことになるな。ふん、有羽との繋がりを私に見せたのは失敗だったようだ、芳田。無桐はかんでないな、それならいくらでもやり様はある』
 思考が一段落ついたのか、それともメモをとり終えたのか、賀古井は携帯をしまうと、部室の中に視線を戻した。既に、湯木と相羽も志茂居も部室に着ており、いつもどおりに無駄話が繰り広げられている。
『悪いが、君たちには苦労をかける』
 呟きは声帯を振るわせることはなかった。
 けれども、その下がった眉尻は如実に言葉を語っている。
 誰一人、会話に忙しく、視線を向けても夕日に照らされた逆光に立つ賀古井の表情は見て取れなかっただろう。

「後輩、けっきょくどうなんだよ」
「ど、うって何がですか?」
 首に腕をかけられヒサキは、湯木に組み付かれている。相変わらず香水とタバコの匂いのする湯木だが、ヒサキはもうソレを不快だとは思わない。
「ばか、ステラちゃんだよ」
「なっ!」
 小声で二人は会話を交わす。そのよこで、もくもくと志茂居は菓子を食べていた。
「ねぇ、すーちゃん。今度の日曜駅前いこう」
「駅前、ですか?」
「うん、駅ビルにね新しいお店入ったんだよ。ほら、二階に流行ってなかった雑貨屋がつぶれてね。そこに新しいお店はいったんだよ。今週末オープンなんだって」
「わかりました」
 部活は騒がしく、そして楽しげに。夕日に照らされて赤一色に染まった帰宅部はゆっくりと時間を過ごしている。



 話がすすまないような、すすんでるような。
 天使症候群の方がつまって鼻血を出しつつ。Ghost in The Houseはとりあえず一段落。
 一つ終わったところで、あとからあとから……。
 ACIは別にAICの誤植じゃないです。くやしくは、第二シリーズ。もっと、くやしく。


 らい様。拍手のjavascriptはご指摘を受けて直しました。
 報告ありがとうございます。

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