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今日の三題話

■連載中のlog
「爆発」「飲み物」「呼応」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 湯木は、騒ぎ疲れ寝てしまった相羽を家に連れて行くといって、タクシーで消えた。
 残されたステラとヒサキは、呆然とビルの前で立ち尽くしている。広場は人通りが多いが、面積も広く混んでいるという印象は受けない。
「沢村さん、ご飯食べた?」
 何かとりあえず話し掛けなければ、そんな根拠の無い思いに急かされ、言葉を紡ぐ。ヒサキの言葉に一瞬、悲しそうに眉をひそめたのは、きっとヒサキが苗字を呼んだからだろう。
 少し間をおいて、ステラは首を横に振る。

「そっか」
 後が続かないまま、ヒサキは口を閉ざした。どうしたらいいだろうか、と。財布に入っていた小遣いは、多分外食する程度なら問題は無い。二人分……やっぱり、自分がおごるべきなのだろうか。背中に伝う汗が、気になりながら、ヒサキは考える。こう言うときこそ、湯木がいてくれればと考える。しかし、いきなりおごられても逆に失礼かもしれない。余り高くない場所にはいり、おごるといって拒否されたら割りかんにすれば……。
 ステラは、難しい顔をし始めたヒサキをじっと眺めていた。
 特に何もステラは考えていない。ただ、言葉をまつわけでもなく、かける言葉を捜すわけでもなく、じっとしている。動く必要性がなかったから。そして、目の前にヒサキがいるから。
 いつもなら、ワンが頭のうえでアドバイスをくれる。大抵言うことを聞いていれば人と折り合いをつけてやっていける、というより、ワンが居なければ何をしていいかすら解らないのだ。疑問すら湧きあがってこない。ステラは漠然と朝家を出るときのことを思い出す。
 相羽との約束の時間まで十分に時間があった。ここにきて、初めての同性の友達ということもあり、やはり断る理由がみつからないまま約束をすることになった。
 だから、行かなければならない。約束だから。
 頭の上でワンがうるさく騒ぎ立てている。
『おい、アイツはこないのか? えっと、ヒサキとかいうの』
 ワンがいると、前みたいなことがあるかもしれない。何であの時、消えかかっていた自分の感情が噴火するように湧き出たのかはステラ本人はわかっていない。
 わかっていないから、ワンの所為だと思っている。ワンが、あんなことを言わなければ、きっとヒサキに「うるさい」などと言うことはなかったはずだ。
「ワン、今日はこないで」
 朝ご飯を軽く済ませ飲み物を飲み干すと、ステラは呟くように言う。
『は?』
 ステラが、何か自分から意見を言うというのは、余りにも珍しいのだ。基本的に、彼女は鏡。牢屋に閉じ込めれば、多分餓死するまで動かない。周りから何かを、もしくは体が何かを訴えない限り彼女の心は動かない。
 それが、幽霊と呼んでいる彼らと共にいる唯一の方法だから。
「ヒサキの時みたいに変な事言いたくない」
『な、なら。だまってるからよ』
 ワンの言葉に、無言で首を振って彼女は答えた。
 こうなるともう駄目だ。幽霊は寂しがり屋だ。目的、つまり心残りの無い幽霊はその寂しさ故存在を維持できなくなる。誰も居ない。自分を見てくれる人は、みつかりはしない。だから、孤独で霧散していく。もし、見える人が、しゃべれる人がいるのなら、幽霊は喜んでそこに集まるし、騒ぎ立てて自分を目立たせようとするだろう。その過程で、無理やり存在を霧散させられる物も多い。
 だから、ワンにとってステラは絶対の存在だった。孤独で霧散しかけていたワンに存在を与えてくれたのは、生まれたばかりのステラの笑顔だったから。
 逆らえない。それは、共生。共に、双方が必要不可欠な共生関係。だから、どちらかが怒りに任せて、関係を切れば、もう消えてなくなるほか無いのだ。ワンも。そして、ステラも。
『わかった……』
 この家には、ステラ目当てにあつまる幽霊も多い。この町に引っ越してから、町全体に同じ存在が増えてきている。それほどまでに、ステラの存在は大きい。
 なぜならばそこらへんにいる、霊媒師とかいうやつらとは根本的に違うからだ。霊媒師とよばれるものたちは、ワンたちのことを別の世界の人間と認識している。
 分かり合おうとするものも中にはいるが、その時点でまちがってる。元から人と人どうし分かり合えないほうがおかしいのに、まず始めに距離を置く。その心の壁が彼らには余りにも大きい山なのだ。距離が、彼らを普通に霊媒師の目に映らせないのだ。霊媒師や、霊力があるといった人間は、殆ど自己の意識を投影し幽霊をみる。存在は、その意識によって揺らぎ歪な物としてしか映らなくなる。いないと、信じ込んでる人間には全くみえなくなる。足が無いというのも、すでにそう言う認識をもっているから。形の無い存在は、認識の呼応して形をかえてしまうほどよわよわしく、儚い。
 認識が無いものにしか、本当の姿は見えない。つまり、子供や動物。そして、ステラのように未来を望まず、過去を顧みず、今を拒絶している人間にしか彼等の本当の姿は見えていない。
 ワンは、ステラの元をされるほどに強くはなかった。
 彼女をそそのかし、人としての生活を脅かした。かれがいつも、ステラの傍でなにかにつけ、口を出すのはきっと、罪の意識からなのだろう。

 ステラは、うんうんと唸っているヒサキをただ眺めている。相羽は、ヒサキとちがい、ステラをひっぱっていってくれた。だから、ワンが居なくても特に不便だとは思えなかった。だが、ここにきてワンが居ないことが、どれほど自分にとってマイナスなのか思い知らされる。
 何も思えない。何も希望できない。何も学べない。何も試せない。
 何も、いえない。
 彼女には進むべき道はなく、振り返る道は無く、先を示す標もない。
 はずだった。
「ご飯、食べよう」
 ステラの声に心底驚いたのか、ヒサキは体を振るわせた。ソレが背中からでもわかるほどだ、近くで爆発でも起こったのかと思うぐらいの震えに、ステラは自分の行動の選択があっているのかどうか不安になった。
「ああぁ、そうだね。ご飯食べよう」
 振り返ったヒサキの顔は、どことなく引きつり、焦っているような、緊張しているようなそんな顔をしていた。
 ステラはそれでも、ヒサキの言葉を信じるしかなかった。ほかに判断材料はないのだ、彼女に感情を察することは出来ない。
 心を殺し、鏡として歩んできた彼女には、他人の感情を読み取ることなんてできやしない。
 はずだった。
「どうしたの?」
 それは、彼女が10年ぶりに発したであろう、己からの質問だった。ワンもいない彼女が、自分で発したことに、本人は気がついていない。
 きっと、そうするのが自然だと、思っているその思いが何年ぶりなのかすら彼女はわかっていなかった。あくまで自然に、そして一歩ずつ確実に、すすんでいた。
 良いことなのか、悪いことなのか、本人すらわからず、誰にも断ぜず、ただ確実に世界は進む。
「なんでもないよ、お店さがそうか」
 ヒサキの言葉に、安心したようにステラが首を立てに振った。



 プレネールさん届いてるけど、写真とりまくったら編集に時間かかりすぎて、アップできない。

 もう、サイトをjugemに移転してから一年以上たってたことにきがついた。
 うむむむ。
 根性。実はあと二回ぐらいで、三題話200回です。はい。

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