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今日の三題話

■連載中のlog
「偶然」「一瞬」「完了」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 席についても、重圧から逃れる術は無く。耳をふさいでも見える視線は突き刺さり。目をつぶっても、届く気配が押し寄せる。
 平然と、だが静かにヒサキの言葉をまつステラの無表情な顔がまるで「情けない男」と語ってるようなそんな気がしてやまない。手に取ったメニューの文字が頭に入ってこないどころか。上下すらわからない。
「沢村さんは、どうする?」

 とりあえず、逃げ出すような気分でヒサキは言葉を発する。
 だが、予想通りステラの答えはすぐにはなかった。一瞬メニューに視線を落とし、すぐにまたヒサキを見る。その表情は何も語らない。ただ無表情に、ヒサキを見つめていた。
「一緒の」
 予想通りの答えに、ヒサキは苦笑する。しかし、それで少しでも緊張がほぐれたのは事実だった。彼は、メニューに視線を落とし、ランチメニューの中から無難そうな物を選ぶ。
 メニューが並んでいる中には、『全裸必至!』や、『こってり、アメリカ人もびっくり』など、至極怪しげなうたい文句が並んでいる、そのうたい文句に一瞬嫌な予感を覚えるが、周りを見回すと普通に注文をしている客。そして、普通に食べている客。見た感じテーブルに並んでいるのは、普通のスパゲティのようだった。
 結局ヒサキが選んだのは、ランチメニューの一つだった。
 店員を呼ぶだけでも実は自分が苦手だという事に気がついたのはそのときだった。
「……すいません」
 振り絞った声は、偶然にも定員が居ないとき響き、店のざわめきにかき消された。
 
 結局、店員が来たときには、ヒサキの背中には変な汗がびっしりと浮き出ることになった。注文を終えると店員は「かしこまりました」と一言いって去っていく。そして、また訪れる静寂。周りはうるさいくせに、自分の席だけが静かだというその温度の差に、ヒサキは目眩すら覚えた。周りの笑い声が自分に向けられているような気がする。騒ぎ声の話題が、自分のような気がする。次第に、その声は回りだし渦になりヒサキの周りをぐるぐると回りだした。
 目が回りそうな喧騒にヒサキは重心を失う。ソレは一瞬だったはずだが、彼の中では永遠の時間。ゆっくりと傾いでいく視界。ああ、自分は倒れている、そのことが理解できても全く体が反応しなかった。ステラが驚く顔。最近、彼女の動かない表情から表情が読み取れるようになった自分が嬉しかった。傾ぐ。傾ぐ。次第に重力すら解き放たれ、音を後ろに。テーブルがせりあがってきて、ステラが見えなくなった。あ、と思ったときには、テーブルの下が。立ち上がろうとしているステラの白い足が見えた。
 こんなときでも、そんなところは見ているのか僕は――
 倒れる。

 気がつけば、店の奥で休まされていた。結局食事もとらず、そこから去ることになってしまったことは、当然といったら当然かもしれない。
 バスに揺られ、ステラを見送ると、ヒサキはボロボロになりながら、帰路を歩いていたのだ。
 最低だった。思い出してまたため息をつく。
「ヒサキ様……」
 ユキの心配そうな声がなおさら、情けなさを加速させる。
「何でも無いんです。大丈夫です」
「そんな状態で、大丈夫だといわれても心配するなという方が無理というものです。ヒサキ様」
 ソレもそうだと、ヒサキも心の中で頷いた。自分でも、こんな姿をみて知り合いを放っておくほうが確かに難しい。だからこそ、やっぱりユキが人工物だなんてヒサキには納得が行かない。首を捻りながら、少しでも普通にしようと息を捻る。けれどやはり、遠くなる意識の感覚や、店の奥で目を覚ましたあのときの記憶がフラッシュバックする。
「すみません。たいしたことじゃないですから」
「心拍数に乱れがあります。それに、視線も安定していません。肌の微細動も確認しました。ヒサキ様は嘘をついています」 
 そういわれると、もう笑うしかない。とぼとぼと歩いていたはずの足取りもいまや、殆ど止まっている。夕日は次第に低く、もうすぐ夜がやってくると叫んでいた。
「色々あったんですけど、恥ずかしいので言うのは勘弁してください」
 正直に初めからそういえばよかったのだ。ヒサキの言葉に、ユキは納得いったかのように頷いた。
「すみません、私には恥じらいが中々理解できないので。人間特有の感情ですね。恐怖、喜び、悲しみ、本能に起因した感情は再現可能でも、理性や記憶に起因する感情は、私にはまだ難しいようです」
 きっと、本当にロボットなのだろう。でも、ヒサキは頭を振る。これほど、自分のことを気にかけてくれる人が、そう人が人工物なわけはない。
「ユキさんは、人間ですよ」
「しかし、体は金属と有機物で――」
「出来ている物質じゃない、それを決めるのは自分と、ほかの人です。だから、少なくても僕にとってはユキさんは人間です」
 ヒサキの言葉に一瞬ユキは止まる。ゆっくりとヒサキの言葉を考えているようでもあり、そして必死に演算をしているようにも見える。ヒサキの目には、間違いなく考えているように見えていることだろう。演算が完了したのか、考えがまとまったのか、ユキは一度顔をあげると、
「ありがとうございます――」
 一礼をした。
 夕日が沈む。街灯の拙い光がゆっくりと灯りはじめた。ゆらゆらと揺れる頼りない光は、それでも道の先を照らし、あの先があるのだと教えてくれている。
 ヒサキとユキは無言で歩く。足取りは先ほどよりも幾分かるい。そして、無言ではあるが、嫌な雰囲気ではなかった。
 大きなとおりに出ると、目の前にヒサキの家が姿をあらわした。
 ユキに一度頭をさげ、ヒサキは道路をわたる。道をはさみ二人は挨拶を交わすと歩き出した。既に夜。ヒサキの家は、静かにひがともっていた。
「ただいま」
「おかえり」
 いつもどおりに、母親の返事が部屋の置くから聞こえてくる。
 靴を脱ぎ捨てて、家に。軋む廊下に踏み出した瞬間。携帯が震えた。
 取り出した携帯には、『賀古井』の文字が。
「はい」
 一瞬だけ嫌な予感がする。
「加賀ヒサキ」
 賀古井の声色が、なんだかいつもとちがうきがしたが。ヒサキにはその答えを見出せない。
「はい、なんでしょうか」
 口の中が乾く。唾を飲み込もうとして、乾いた舌先がざらりと口の上を舐めた。
「志茂居が死んだ」



 晴れて200回。お疲れ俺! そして、終わらない連載!
 いぇー!

 漫画のネームはとりあえず終了!
 10月には本になります。ネットで販売はしません。何で宣伝するんだってかんじですね?

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