スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

今日の(三題)話

■連載中のlog
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 ロボットというのだから、やはり関節には隙間が空いていたり、体に幾筋も線が入っていて、どこか秘密の場所を、秘密の場所っていうとエロイ気もするけど、秘密の場所を押すと、いきなり体が開いて、中から色々と回線や、無駄に光るLEDが点滅して、細いシリンダが油圧か気圧でゴムのパッキンを擦らせて動いているのだ。
 きっとそうだ。
 だから、いま自分が抱きついているのは、人間の女性である。
 ヒサキは、そう思うことにした。

 だから、車の外からだって見たことの無い速度で流れていく夜の町なんていうものは、全く論外で、目の錯覚なのだと信じようとしている。きっと、視線が低い位置にあるからそうみえるのだ、きっとそうなのだ。乗用車に乗って移動しているときのほうが視線が低いなんて、たぶん気のせいだ。
 ヒサキはユキの背中でそんなことを思いながらしがみついていた。
 車に轢かれそうになったヒサキをユキは軽々と抱え上げ、助けた。それは紛れもない事実で、こうしてヒサキは息をして、そして賀古井を助けに向かっている。
 尋常じゃ無い速度で。
 夜は、光が焼け付く。流れる光は網膜に残り幾重にも重なりつづけ、次第に光の川の様相を見せ始めた。ヒサキはそれをただじっと見つづけている。ユキの背中は温かく、良い匂いがする。だから、流れる光も耳を叩く風の音も気にはならなかった。
「もうすぐ着きます」
 風にのって、ユキの言葉が届く。酷く遠く、そして雑音にまぎれてるはずなのにその言葉はしっかりと聞き取れた。
 声を出すのをはばかれたヒサキは、頷いて答える。その視界の端に、学校の姿が見えてきた。夜の闇に尚暗く、その姿はまるでそこだけ世界から落ち抜けたような印象すら与える。
 すっと、耳を叩いていた風が、収まりヒサキは顔を上げた。目の前には学校が広がっていた。毎日数十分の時間をかけて登校している距離を、数分にまで縮めた本人は、ヒサキを降ろす全く乱れていない呼吸で、一礼。
「ありがとうございます」
 ヒサキの言葉に、ユキは上品にほほえむ。言葉はない。
 歩き出すヒサキの後ろを、無言でついてくるユキの姿が、街灯に照らされ校舎に影を投げかけている。小走りに、テニス部の部室に向かう。警備員の心配をしたがどうやら休憩か、晩御飯の時間なのだろう全く明かりもみえなかった。小走りに二つの影が校舎をまたぎ、部室練へと到達する。
「ここ、かな?」
 練を照らしている電灯は、まるで風に影響されているかのように明滅を繰り返している。たまに、電灯にぶつかる羽虫が乾いた音を立てていた。
 ヒサキの目の前には、テニス部と印字された板が掲げられている。目の前の扉は少し開き、風にゆれて、嫌な音を立てていた。
「部長?」
 返事は無い。だが、ヒサキはその隙間から向こう側の匂いを感じた。向こう側を意識的に開ける方法なんて、ヒサキは知らないけれど、空いているのなら別だ。手をかけ、彼は一気に扉を開く。
 光というものが存在することを許されていなくせに、なぜかはっきりと何が在るかわかる。まるで色を一色に塗りつぶされた世界のような違和感。
 肌に絡みつく空気のなか、目の前になぜか見たこともない色彩の通路がみえた。
「つ、うろ?」
 白い。はずなのになぜか真っ暗だと心が思う。目も記憶も、白と一致するくせに、なぜか暗い。理解できないのだが、それでもそこが暗闇で、そして賀古井がそこに蹲っているというのは理解できた。
「部長!」
 部室でいうところの、窓。そこが開いており、一直線に白い闇が広がっている。そして、入ってすぐの場所に賀古井は蹲っていた。
「加賀ヒサキ……」
 ヒサキに気が着いて賀古井が顔を上げる。
「部長どうしたんですか?」
 何でそんなところで埋まっているか理解できない。出たいのならば出れば良いじゃないか、手を伸ばして端に手をかければすぐにでも外に――
「止まれ。まずは話を聞け。加賀ヒサキ、君は落ち着きがなさ過ぎる」
 手を伸ばそうとして、賀古井の言葉にヒサキはびくりと体を振るわせた。
「おや、都紙のメイドか。経過はどうだ? まだ繋がっているか?」
「いえ、研究施設の敷地内では、接続を確認していません」
 ユキのよどみない言葉に、賀古井は薄く笑う。体育座りのようなすがたで、壁にもたれかかり、顔をうずめて笑う。
「貴様、芳田に教えただろう?」
「はい。聞かれたので」
「おかげで、やり直しだ」
「申し訳ありません」
「いい、機械が嘘をつくほうが私は恐ろしい。質問にまでたどり着いた芳田をほめるべきだな」
 まったく、人を見る目ではなかった。顔をあげ、ユキを見た賀古井の目は、パソコンや携帯を覗くような、全くの気兼ねも感情もない眼だった。
「なんだ、加賀ヒサキ。そこのメイドがまだ人間だとおもっているのか?」
 心を見透かされた、そんなきがしてヒサキは後ずさる。
「え、いや、その」
「加賀ヒサキをここまで運んできたのだろう? 高校生男子を担ぎ、その速度で走れる人間がいるのか?」
 その、目は責めている目ではなかった。だからヒサキは飲まれずに済んだのかもしれない。賀古井の目は、まるで、子供が答えるのを待っている、そんな目だった。
「うっ……でも。ユキさんは人間だと思います」
「どうして?」
「違うのなんて、体のつくりぐらいだからです」
 ヒサキの言葉に、賀古井は一瞬目を丸くした。驚いた姿はなんだか見慣れなくて、その姿にヒサキは驚く。
「ははははは。そうか、執着しないというのはそう言うことか」
 白い闇のなかで、賀古井が笑う。その笑い声は、なんだかひどく遠くに聞こえた。
「さぁ、加賀ヒサキ手を伸ばしてくれ。細かいことは解らないが、空間が一方通行になっているらしい。此方からは出ることができないのだ」
 そういって手を伸ばす。その瞬間おかしなことがおきた。先ほどまで手を伸ばせば白い闇から十分に出る場所にいたはずだったのに、賀古井の手はギリギリで白い闇を出ない距離になっている。まるで錯覚のように。認識できる速度以上でで、床が動いたのかと思うぐらいにそれは異質であって、そして異質の正体もわからない。奇妙な感覚だった。結果だけがそこにとどまって、ヒサキに問い掛けている。
 白い闇にいる、賀古井の手を掴む。
 まるで、ずるりと。そう、手首から先が液体のようになって滑ったのかと思うような感覚。骨が、肉が、血管が、神経が、それでも交じり合わず、ただ飛沫のように吹き飛んだ。
 驚きに目を見開くが、ヒサキの眼球はいつもどおりの彼の手を移していた。賀古井の手が触れた。その感触を皮切りに、手首の感覚が戻ってくる。
「すまないな、苦労をかける」
 賀古井の呟きは、酷く寂しげに聞こえた。



 文字化け拍手がとどいて、ないてみたり。枕を濡らしてみたり。あえて、前日の拍手が押されてみたりしてるweb拍手は此方

スポンサーサイト

コメント
トラックバック
この記事のトラックバックURL