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今日の「三題」話

■連載中のlog
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 自分が一人だとわかったときの寂しさというのは、一体どういった寂しさなんだろうか。自分の肩の上、まるで支えを失ったかのような顔をしているリロを見ながらヒサキは思う。
 想像してみる物の、特に寂しいとは思えないヒサキは、首を傾げる。
 腕の中で、硬い音を立てているユキも、一人ぼっちだっただろう。でも彼女も寂しいとはいわなかった。
「一人は寂しい?」
「え?」

 思わずついて出た疑問に、ヒサキは自分自身で驚く。そんなの、普通に考えれば当たり前だ。そう、当たり前のはずだ。自分が寂しくないのは、ただ想像力が及ばない、それだけのことだ。まるで言い聞かせるようにヒサキは歯を食いしばる。
「わかりません。でも、そうじゃなければいいなって思います」
 震える彼女の体は、小さいのも手伝って余りにも弱々しく見える。しらずにヒサキは腕に抱いているユキを強く抱きしめていた。

 何とか追いついた時には、既に息が上がりはじめていた。目の前を走る部長と志茂居を背負った男の速度は、信じられないほど早いというわけではない、むしろ遅い。一人は人を抱え、もう一人は、肩とはいえ銃に撃たれたのだ。けれどヒサキもユキを抱いていた。既にユキの体は半分ほど銃弾に削り取られ、体から血は流れ尽くし、軽くはなっている。ただ、体力の消耗に無視できるほどの重さでもなかった。走るたびに、硬質な音がする。その音が、「もうユキは帰ってこないのだ」といっているようで、ヒサキは嫌だった。
「くる」
 男の呟きに、振り返る。夜の街は静かで、冷たくただ在るがままにそこに佇んでいる。長い、直線の道路。学校へと続く大通りにつながっている道だ。
 かなり長い間走ったのか、振り返ると道の行き止まりは見えていない。見えているのは、
「原初……」
 白く光る原初が、直線上に佇んでいた。白い、光は拙くて目をそらせば見えなくなってしまいそうなほど小さい。だが、ヒサキはそれから目をそらすことは出来ない。
 否、目をそらしてはいけない気がした。
「おい、君」
 焦った声が後ろからかけられる。ユキの願いをかなえに来たという男の声だ。
 振り返れば、心配そうな顔がそこにあった。
「早くにげるぞ。追いつかれるわけには――」
「追いつかれるとどうなるんですか?」
 何で逃げてるんだろう。原初をみると、そんな疑問がわきあがってくる。始めはかすかな反抗心だったかもしれない。けれど一度湧き上がった、反抗心は一気に形を大きくしてヒサキを押しつぶそうとしていく。
 きっと。ユキを泣かしたのは自分で、目の前の男はユキの願いをかなえに来たからだ。理由なんてとくになかった。
「俺は、君を守る必要がある。それがユキさんの願いだから」
「っ! ユキさんはそんなこと一言だって――」
「加賀ヒサキ! もめている時間は無いぞ!」
 賀古井の叱責は、「向こう側」の空気すら吹き飛ばしそうな勢いで飛ぶ。
 ヒサキは思わず肩をすくめた。肩に乗っていたリロがその動きで肩から滑り落ちる。
「わっ、わ」
 飛べるのだから、地面には激突しなかったが驚いて反応が鈍かったのか、ヒサキの体に二三度体をぶつけた。
 ヒサキが手を差し伸べると、リロは助かったとばかりに手のひらの乗ってくる。重さは無い、ただ触っている感触だけが肌から伝わってきた。と、いきなりリロが顔を上げて叫んだ。
「けいたさん!」
 目の前の男が担いでいる志茂居へと飛ぶ。
「あ」
 ヒサキの驚きは、賀古井と男には伝わらない。何に声を上げたのかと視線を投げかけられるがヒサキはただ視線をそらしてそれに答える。
「けいたさん! しんじゃやだ! しんじゃやだ!」
 リロの言葉に、ヒサキは志茂居を見る。目をつぶり、ただ静かに男の背にもたれかかっている。身じろぎ一つせず。
 そう、ピクリとも動かず。
 心臓も。肺も。
「志茂居先輩……」
 伸ばした手が触れた志茂居の肌は、余りにも冷たかった。
「もう、死んでる。心臓停止からの蘇生限界は十分だそうだ、それどころか、既に出血多量で見込みは全く……ない」
「え? 出血?」
「見てないのか。彼は首を切られて死んでいる」
 男が何を言っているかわからない。ヒサキは後ずさりする。
「首をナイフで。既に出血すらなくなるほどに、だ」
 その言葉は、まるで他人事のようにヒサキの耳から頭へと突き刺さった。
「先輩は、「向こう側」で死んだのに。なんで――」
 白い人に殺されたのではない?
「来るぞ」
 賀古井の言葉に、意識が現実に引き戻された。
 振り返れば、原初がすぐそこまできている。今度は手を振り下ろせるか、ヒサキは自問自答するが答えは前とかわりはしない。
 一歩、目を離さずに下がる。腕の中でユキが揺れる。
「ヒサキさん」
 リロの声。
「名前……」
 そういえば名前教えてないのに。
「あのひとは、わたしを食べるっていってます。どうしてですか?」
「え? リロを? 食べる? 原初が?」
 ヒサキの言葉に、賀古井が反応した。
「そこに居るのか、加賀ヒサキ。そこに妖精がいるのか?」
 その目は疑問の目ではなく、確信と確認の視線。
「え、あ、はい」
「それが原初が求める最後の糧だ、それをつれて逃げろ」
 賀古井の言葉はいつものように質問を許さない頑とした響きをもっている。同時、賀古井は前に出る。肩の出血は止まっているようだが、黒地の制服の上からでも血が染みているのがわかる。肩で息をして、ナイフを手にヒサキを背に立った。
「原初は何でリロを……」
「なに?」
 何か、そう何か、
「それに志茂居先輩はナイフで首を切られたって……」
 何かおかしい。賀古井の持っている手にあるのは、
「部長、そのナイフ」
 手にあるそのナイフは、
「加賀ヒサキ……」
 何で、
「何で」
 赤く、
「血にぬれてるんですか?」





 おかげでトイレが早くなった!
 さらに、怖いCMの所為でトイレにいけない! Oh! モーレツ!

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